関西医科大学 木梨 達雄学長インタビュー[中編]
■ 患者へ有効な新薬をいち早く届けるために――国際がん新薬開発センターの新設
ダブル・ディグリー制度もそうですが、国際化に関する取り組みのひとつの成果として、現在、本学とアメリカの会社とで合同会社を設立し、国際的な治験センターを作る計画が進行しています。治験とは、薬の安全性や有効性を調べる臨床試験です。これに合格して初めて、保険診療でその新薬は使用可能となります。
「ドラッグ・ロス」という言葉をご存知ですか?世界的に見て、日本の医学界は非常に規制が厳しく、海外で認証されている新薬でも、日本ではなかなか治験が進みません。そのため、海外ではすでに臨床で使用されている薬なのに、日本ではそれが使用できない、という問題が起こっているのです。
そういった状況を克服すべく、特にがんの新薬について、対象となる患者さんに治験を行ない、効能と安全性を確認し、新薬をいち早く市場に出すことを目的とした、国際がん新薬開発センターを新設しました。国内初の、がんの新薬開発に特化した治験センターです。合同会社と連携して治験を推進していくことになります。
--準拠法は日米のどちらに基づくのでしょうか。
日本です。両国が出資しますが、日本で新しい会社を設立し、そこでがんの新薬の治験を行ないます。
--国際的な治験ということは、日本人も治験の対象となり得るのでしょうか。
もちろんです。むしろ日本人の治験を行ないたいと考えています。実際に日本人のがん患者さんで、今の治療薬では効果がみられないため、開発が進んでいる新薬の治験への参加を望まれる方もいらっしゃるのですが、現在、日本ではその受け皿が限られており、なかなか参加が叶わないのです。そこで、アメリカの会社と提携して新しい合同会社を設立し、従来よりも早く、さまざまな治療を試すことができる体制づくりを目指します。