関西医科大学 木梨 達雄学長インタビュー[前編]
--昨今、各大学で女子学生の比率を上げるためのさまざまな動きが見られますが、貴学のご状況はいかがでしょうか。
本学は実態として、ずっと女子入学者の割合が高いです。伝統的に、男女分け隔てなく入学していただいています。特に2023年度より学費を値下げしたことで、さらに女子の入学者が増加しました。もともとこの施策は、広く門戸を開き、多様性のある人材をリクルートして育成することを主旨とするものですが、その最も大きな成果は女子学生の獲得でした。この結果は、時代の趨勢をよく表わしているとも思います。
2023年度入学者は女子が男子を5人ほど上回り、一方、2024年度は男子が女子を9人ほど上回りました。男女比がおよそ同数で、本当に男女共学という雰囲気になり、私はこれをとても嬉しく思います。女性の活躍なくして、今後の医療の発展はあり得ませんから。
他方、近年医療の世界においては、特に女性の負担が指摘されており、医師の働き方改革の中でも、女性の負担をいかに軽くして、ワークライフバランスを実現させるかが大きな課題となっています。このことを踏まえ、本学では女性医師の活躍を応援すべく、2020年に「オール女性医師キャリアセンター」を設立しました。全ての女性医師がさまざまなライフイベントを迎えながら、本学で安心して働くことができ、かつ、医師としてのキャリアも継続できるよう、女性医師の声を積極的に取り入れ、本学の制度や施設設備の改善と発展に取り組んでいます。こうしたところにも、本学の伝統を感じますね。
--名ばかりではない、内実が伴った本当に素晴らしい伝統だと思います。
ありがとうございます。しかしながら、日本社会全体を見渡すと、いわゆる「ガラスの天井」が女性の社会進出を妨げる大きな壁として、未だ残存しているように思います。
例えば教授陣の中に女性が何人いるか、法人の中に女性の理事が何人いるか。そうしたところで「ガラスの天井」は顕在化します。そして、日本はこの点で、世界に大きく遅れをとっているのです。女性教員の割合は徐々に増えてきましたが、教授クラスはまだまだ不足しています。
本学の場合、業界全体と較べて、教員に占める女性の割合は高いほうだと思いますが、やはり理事クラスまでいくと、なかなか女性の人材はいません。このような現実が未だにあるため、本学としてもこれからより一層、女性の活躍を応援していく必要があります。
本法人のトップである山下敏夫理事長も、今後経営のトップ層に女性を積極的に登用していくべきとお考えで、盛んに「女性の理事をもっと増やさなければならない」とおっしゃっています。大学全体として、女性の活躍を応援する気運がみられるようになってきました。