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  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

立命館アジア太平洋大学 出口治明学長

 出口:サステイナビリティの課題は、世界のあらゆる地域で、あらゆる側面から対応が求められる新しい課題です。あらゆる側面というのは、企業社員でも自営業でも、どんな仕事に従事する人にも必要な要素であるということを意味しています。

たとえば、自分が担当している事業や顧客や制度や組織が、どうやればサステイナブルに発展の道をたどることができるか。仕事に従事する人であれば、多くの方が思い至るテーマではないでしょうか。近年の「働き方改革」の流れは、そのような働き方の持続可能性に焦点をあてた取組みです。

SDGsで話題となっている地球環境や社会や文化などの大きなテーマは、概して自分自身、一個人としては遠いテーマと捉えられるかもしれません。しかし、そこで検討される持続可能性は、自身の身近な仕事や生活にも応用できる部分が多々あります。地域での実践を組み合わせた学びを通じて得られるそのような知識・技能に、サステイナビリティ観光学部の大きな特徴があると言えるでしょう。

また、同質性の高い環境は、一見心地よく感じられる一方で、持続可能性が低く壊れやすいと言われます。APUは世界に類を見ないダイバーシティ豊かな環境をキャンパス内に実現しています。こんなるつぼのような環境に飛び込み、自ら試行錯誤しながら学び、サバイブしていく。それこそがサステイナビリティとは何か、何が必要か、そのために自分は何をすべきか、について身をもって学ぶことにつながると確信しています。

出口:APUは2000年に、社会に大きなインパクトを与える形で開学しました。そして、2023年度、「第2の開学」と位置付けて、開学以来、初めて世界でも珍しいサステイナビリティと観光を学ぶ学部設置をおこないました。人生について、僕がいつも話していることは、40、50、60歳などといった切りのいい数字に惑わされ、自分にあらかじめ制限を設ける必要はまったくない、ということです。

実際、世界を見渡せば、日本を除き定年制度という制度はどこにも存在しないわけです。還暦で起業、古希で学長就任という僕の挑戦は、僕が「面白そうや」と思う流れに身を任せて、そこで精一杯適応しようとしてきた結果です。大学も同じです。今年度が「第2の開学」で、さらに何年後かに第3、第4の開学があるかもしれない。APUはそうやって何度でも、挑戦と失敗を繰り返し生まれ変わりながら進化していく。

そもそも働くということは、昔何をやっていたのか、何ができたのかは関係なく、現在の能力と意欲、体力に応じて、それにふさわしい仕事をするというのが世界の常識です。僕は、脳卒中で倒れてから1年でAPU学長職に復帰しました。それは当時の僕自身に問いかけ、能力・意欲・体力を踏まえて、人生を楽しむ方法として選択したものです。

これからの人生選択も同じです。「人・本・旅」を続けながら、毎日少しずつ世界がクリアになっていく。そして面白そうな場所で精一杯適応する。それが僕のおいしい人生の送り方です。

リンク:
立命館アジア太平洋大学 – 立命館アジア太平洋大学 (apu.ac.jp)
サステイナビリティ観光学部 – 立命館アジア太平洋大学 (apu.ac.jp)


出口治明 学長

プロフィール
1948年、三重県に生まれる。京都大学法学部卒業。日本生命保険相互会社に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年、同社を退職、生命保険準備会社であるライフネット企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。2018年、立命館アジア太平洋大学の第四代学長に推挙され、同大学初の民間出身の学長に就任。2021年、脳出血で倒れもリハビリを経て復帰し、現在2期目。著書は、歴史書・教養書関係を中心に多数。現在も意欲的に執筆を続けている。

 最近の著書:
・出口治明『逆境を生き抜くための教養』幻冬舎新書  https://amzn.asia/d/7jRwnYe
・出口治明『なぜ学ぶのか』小学館Youth Books https://amzn.asia/d/0M02r6v
・出口治明『復活への底力–––運命を受け入れ、前向きに生きる』講談社現代新書 https://amzn.asia/d/4YnkIJM

インタビュー、構成・編集:原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)

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