「2040年の大学・高校」データが示す大学・高校 二つの全国調査から見る展望と課題

4. 入学後の接続と学修支援

入試改革と並行して、入学後の教育・支援体制の強化も急務となっている。

4.1. 入学前教育の重要性と実態

(1)実施状況:
9割以上の大学が、年内入試合格者などを対象に入学前教育を実施している(KEI調査)。

(2)目的と内容:
入学前教育の主な目的は「学習意欲の維持・向上」と「基礎学力の補強」が多数を占める。具体的には、数学と英語の課題や、レポート課題を課す大学が多い。年内入試の拡大に伴う入学までの空白期間を埋める重要な施策と位置づけられている(KEI調査)。

4.2. 学業不振学生への早期介入

学業不振学生への対応は、事後対応から「早期発見・早期介入」へとシフトしている。また、GPAや出席率をモニタリングし、基準を下回った学生に警告を発する「アーリーアラート」の仕組みや、教員アドバイザー制、チューター制、学習支援センターによる個別支援などが導入されている(KEI調査)。

4.3. 入試区分別の成果分析

多くの大学が、次世代の入試形態を模索し、具体的な改革を検討している。

(1)評価軸の多様化:
「探究活動」の成果や「情報」の成績を評価に取り入れたいという意見も見られる(KEI調査)。

(2)入試方式の拡充:
外部英語試験の利用拡大、女子枠や留学生枠といった多様性確保のための入試制度の導入が検討されている(KEI調査)。

(3)受験生の利便性向上:
併願制度の導入や、試験日程・会場の最適化など、受験生の負担軽減も視野に入れている大学も多く見られる(KEI調査)。


5. 大学経営の戦略的重点

5.1. 最優先課題としての高大接続

学長アンケートでは、「高大接続」を「最優先で力を入れたい」「今より力を入れたい」と回答した大学が合計で9割以上に達した。18歳人口減少時代において、高校との連携強化は大学の存続を左右する最重要課題と認識されている(KEI調査)。

5.2. 地域連携と外部連携の強化

多くの大学が、自治体や地元企業との共同によるPBL(Project Based Learning)型教育の導入など、地域課題の解決を大学改革の中心に据えている。地域や企業との連携強化を重視する大学は8割前後にのぼり、外部資源を活用して教育・研究の質を高めようとする姿勢が明確である(KEI調査)。

5.3. 学部再編と教育内容の改革

社会の変化に対応するため、多くの大学が学部・学科の再編を計画している。とくに、デジタル、データサイエンス、グリーン分野、医療・福祉といった社会ニーズの高い分野への重点化が進んでいる。戦略としては、多様な分野を網羅する「百貨店型」から、特定分野を「狭く深く」掘り下げつつ、分野横断的な「文理融合」や「学際化」によって多様性を確保する方向へとシフトしていると言えよう(KEI調査)。


セミナー「対談パート」のレポートはこちら:
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(記事おわり)


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KEIHER Online

〇「KEI大学経営総研 全国国公私立大学学長アンケート」
https://keiher.com/president_questionnaire/


2025年12月22日「河合塾・KEI大学経営総研共催WEBセミナー」 河合塾×KEIアドバンス セミナー実施概要
テーマ:2040年の大学・高校、高大接続を展望する:学生・生徒中心の教育の再構築へ~データが示す大学・高校の未来像
実施日時:2025年12月22日(月)16:00~17:30
ゲスト:
・溝上 慎一 氏(学校法人河合塾 教育研究開発本部 研究顧問・学校法人桐蔭学園理事長・桐蔭横浜大学教授)
・増谷 文生 氏(朝日新聞 社会部記者)
プレゼンター:
・「ひらく 日本の大学」2025年調査結果より:
 師岡 啓(学校法人河合塾 教育研究開発部 情報企画チーム)
・「全国国公私立大学 学長アンケート」2025年調査結果より:
 阿部 千尋(株式会社KEIアドバンス・KEI大学経営総研 研究員)
・ [司会]
 原田 広幸(KEI大学経営総研 主任研究員)

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