オピニオン/研究

複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

東洋大学 入試部長・加藤建二氏 講演

■2025年度 併願可能な「学校推薦入試基礎学力テスト型」の導入

ここからは、年内入試で入学する学生の基礎学力不足に対応するために、2025年度入試から導入した併願可能な「学校推薦入試基礎学力テスト型」についてお話しします。これは関東の大規模私立大学では初めての試みです。
2025年度は、学校長の推薦書と調査書があれば出願できるよう、学習成績の状況等の出願条件は設けず、2教科2科目のマークシート方式の基礎学力テストで判定しました。年内の学校推薦型入試であることを考慮し、試験内容は一般選抜の個別学力試験のレベルとは全く異なります。


下表が今回の結果です。志願者数は19,610名で合格者数は4,194名、倍率は4.68倍、入学者数は906名でした。歩留まりは20%強ということになります。ただし、この4,194名の中には、大学内併願で複数合格した学生が含まれるため、実際の合格者数は大体2,500名、その中で900名の方が入学手続きをしたので、歩留まりとしては40%弱と、一般選抜よりかなり高くなりました。

この試験に関する報道では、もう少し高いレベルの大学を目指す学生が、年内入試で合格を確保しておこうとしたのではないか、ということが言われていました。そういう学生もいたかと思いますが、結果的に東洋大学を第一志望にしていた学生が非常に多く、合格者の約15%は、12月中に入学の本手続きまで完了していました。


この基礎学力テスト型の志願者を、前述の高校ランクで、共通テスト型と一般入試と比べてみると、一般入試の志願者にかなり近い学生であったことがわかりました。総合型選抜や学校推薦型選抜で専願型の試験も行っていますが、それとはかなり違う層が受験したと考えています。

入学者でも同様の結果が出ています。入学してまだ2、3か月ですので、この学生たちが、今後どのようなパフォーマンスを発揮するかを追跡して、この方式を広げていくかどうかを検討しようと考えています。

基礎学力テスト型の志願者は、英検などの英語外部試験で資格を取っている学生が非常に多かった印象です。入学者で言えば、一般入試、共通テスト利用入試と比べても最も高くなっており、日頃からコツコツ勉強してきた人が多い、という印象でした。

入学者の属性を見ると、やはり推薦なので女子の比率が他の方式より格段に高い、という特徴がありました。
また、試験会場が関東のみでしたので、やはり首都圏の比率が非常に高くなりました。ただ、地方の国公立大学を受験するために併願していた人も一定数いたので、そこのニーズはあるかなと思っています。


基礎学力テスト型の実施までの経緯をまとめたのが下のスライドです。
2024年3月に導入を発表して、10月頃までは高校の先生方、特に進路指導の先生方には非常に好評だったのですが、その後高校の校長会や、大学入学者選抜協議会から「この試験はどうなのか」という話が出て、文部科学省からお呼びがかかりました。

大学としては、大学入学者選抜の実施要項に即して実施していると考えていましたが、12月になって「ルール違反」と報道されてしまったのですね。我々としてはかなり心外でしたが、きちんと説明を尽くそうということで、いろいろなところで説明させていただきました。

調べてみると、私立大学の中で、特に関西の大学では、本学と同様な試験を実施しているところが235校、国公立大学の中でも相当数ありましたので、その辺りについてもデータを文部科学省に差し上げてご説明しました。

2025年3月には、そういう実態を踏まえた形で、年内の基礎学力の試験が認められる方向に変わりました。ただ、これには条件があります。
もともと年内入試は、多面的・総合的な評価を実施するという基本原則があり、そこは重視するということで、基礎学力試験を行ってもよいけれど、小論文や面接、実技といったものと組み合わせて、調査書もきちんと使いましょう、ということです。

これについては、本学も事前にその情報を得ていたので、その方向で検討させていただき、最後に3月に文部科学省から一応のお墨付きをもらった形で現在に至ります。本学が基礎学力テスト型だけで入学者を取っているような報道もありましたが、この方式は募集人員の8%だけですので、そこはご理解いただきたいと思います。

先ほどから高校ランクの話をしていますが、ここ10数年で、東洋大学の志願者と入学者の構成は下のスライドのように変わってきています。

入試結果の調査では、週刊誌等に掲載される学校別の合格者数や、高校のホームページ等のデータを拾って、下表のような一覧を作成しています。そこで合格者に占める高校ランク1から10の出身者の割合がどのように変化しているのかを継続してウォッチして、本学の立ち位置がどのように変化しているのかを共有しています。

特に、スライドの一番下の私立理系大学における割合が着実に上がってきています。
これには、キャンパス移転の効果もあったと思いますが、こういった調査では、競合校との比較や、複数の大学に合格したときどこに入学したか、ということも、きちんと数字で把握することが必要であると考えています。

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