
豊島岡女子学園 中学校・高等学校 インタビュー[後編]
探究活動が学生にもたらした変化――豊島岡女子学園高等学校【独自記事】
教務部長・教務部 進路進学指導委員会主任 十九浦先生
探究部会主任・総合企画委員会主任 増田先生
SSH推進委員会主任 豊田先生
■生徒たちの自主性に変化――英語×サイエンス教育
--探究活動の発表会である『AcademicDay Final』に参加させていただいて、その大規模さに驚きました。『AcademicDay』を始められた当初と比べて、どう変化していますか。
増田:年々大規模になっています。2024年度の『AcademicDay Final』の発表件数は全体で400件を超えました。高校1年生、高校2年生で探究活動に関わっている生徒たちは全員発表しますし、『探究Basic』の中学生も発表します。それに加えて壱岐島やインド等、校外に行って活動している生徒たちの発表も60件以上ありました。年々、発表件数が増えていく傾向にあります。
十九浦:『AcademicDay Final』は外部の方にも参加していただき、発表を見ていただいていますが、70%ぐらいの方が、本校の探究活動の発表の半分以上がレベルが高いという評価をしてくれています。
増田:発表はレベルの高いものを選んでいるわけでなく、全件発表しているので、その中でそのような評価をいただいているというのは、生徒たちがよく頑張っている証拠であると感じます。
また、毎年『AcademicDay 1st』『AcademicDay Final』をやっていく中で、SSH校の合同の発表会や、大学と連携している外部の発表会からお声がかかる機会があります。そのような外部の発表会に、参加を希望する生徒が近年増えてきています。
十九浦:具体的な数字を申し上げると、SSHに認定された年である2018年は外部での発表件数が5件だったのが、2024年度には205件になりました。更に特徴的なことを言うと、外部での英語での発表は2018年には0件でしたが、2024年度は61件になりました。英語で発表する生徒もかなり増えてきています。
--英語で発表する生徒が増えたというのは、生徒たちに自信がついてきたのでしょうか。
十九浦:というのもありますし、授業の中でも英語でしゃべる機会を増やすよう変革したので、その効果が出てきていると感じています。
増田:先日職員室で社会科の先生が、探究活動をやる前とやった後で、同じ授業をやっていても生徒たちの質問が全く違うとおっしゃっていました。生徒たちが以前よりも深く掘り下げるような質問をしてくるようになって、すごく良いことだと思うと。
--探究活動を通して、生徒の自主性が育っているということですね。
増田:そうですね。探究活動では、自分から動かないと何も起こりません。自分たちで必要な物品を申請しなければならないですし、もしその物品が高いものであれば、どうしてそれが必要なのかプレゼンし、交渉しなければなりません。また、自分のやりたい実験が安全だということをしっかりと教員に説明して、OKを貰わないと実験もできません。
実際の実験にたどり着くまでに、自分で解決しなければならないことがたくさんあります。そのような仕組みの中で、少しずつ生徒たちは自分で行動することができるようになっていきます。
--生徒の学び方自体が変わっていっているのですね。英語の話で言うと、英語で理科の授業を実施されているとお聞きしました。
増田:中学1年生の時から、英会話の授業に数学的な要素や理科的な要素を入れ込んで展開しています。具体的には、中学1年生から中学3年生までの毎学期、サイエンスの実験をネイティブの先生が全英語で実施しています。また、3学期には自分たちの実験内容と結果を『Science Fair』という英語のポスタープレゼンテーションで授業内に発表させています。中学1年生はグループで分担して発表まで行いますが、中学3年生は自分でひとつテーマを選んで、1人で英語のプレゼンをするところまでステップアップします。
高校1年生では『ディベート英語』という授業で英語のディベートを行います。お互いに賛成意見と反対意見を言い合う練習をしていますし、そのレベルも毎年上がってきています。3学期に高校1年生がディベート大会を実施するのですが、審査をしてくれている卒業生が、そのレベルの高さに驚いていました。
高校2年生では『STEAM英語』という授業があります。ポスターやプレゼン、論文等のアカデミックライティングについて講義を受け、普段勉強している日常英語と科学英語の違いを学ぶカリキュラムで、実際に実験をして、その結果や考察を英語でレポートにまとめるという取り組みを実施しています。
高校3年生では『科学英語』という授業があり、高校2年生の時に行った探究活動について、英語のスライドを作って英語で発表します。
このような取り組みを、6年間を通して全員がやっていくと、次第に英語に対するハードルが下がっていって、生徒たちが「私にもできるんじゃないか」という気持ちになっていくのを感じますね。
十九浦:『AcademicDay Final』の最後、体育館では全員英語で発表しているので、発表を聞いている生徒たちも「みんな英語で発表できるんだ」と感化されます。そういう意味でも、『AcademicDay』の価値は大きいです。
英語の話に限らず、高校生が高度な検証をやっているのを中学生が見て、「すごいな」と思うだけでなく、今後実際に自分たちもそれをやることが前提になっていますから、先輩たちが作った土台の上に積み上げていくという段階に入ってきたことにより、年々活動のレベルが高くなっていると思います。