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複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

河合塾講師が語る!2025年度新課程入試 ―地理編―[前編]

「地域調査」の公平性を考える -共通テスト『地理総合,地理探究』結果分析④-

第1問 問4は、『地理総合』になって新しく扱われるようになった「フードロス」をテーマとし、資料を読み取らせた上で、生産から消費に至る各段階での食品ロスについて考えさせる問題となっています。地球規模の重要課題を、資料を用いて上手く問うことができているだけでなく、正答率も67.8%とバランスがとれており、「このような問題を良問と言うのだろう」と思いました。

先ほどの第2問 問3が、「一般的な知識問題」と言えるかが争点となるでしょう。

例えば第2問 問1は、地形図読図を行った上で、資料中の下線部a~cの正誤判定をする問題ですが、地元に居住する受験生とそれ以外の受験生の間で有利不利が生じないよう、地図上の三角点や水準点が目立つように加工されています。正しく地図の読図ができれば、居住地域を問わず、誰でも正解できるような工夫が施されているのです。それが奏功したのでしょう。通常8択の正誤判定問題は正答率が低くなる傾向にありますが、本問の正答率は71.5%でした。

このように、正しくアプローチすれば誰もが平等に正解できるよう配慮がなされているのが、「地域調査」をテーマとする問題の基本です。しかしながら、第2問 問3には、そのような配慮がなされていたでしょうか。あるいは、誰もが一般的に身につけているはずの知識で構成された問題であったでしょうか。この点を考える必要があります。

仮に第2問 問3が「渥美半島はキャベツの主産地である」という知識を前提とする問題であった場合、「特別な知識」を要求している点で、地元に居住する受験生に有利な問題であったと言えます。そうすると、「地域調査」をテーマとする問題としては、工夫や配慮が不足していたと言わざるを得ません。

「地域調査」をテーマとする問題は、旧センター試験時代から今日の共通テストに至るまで必ず出題されてきましたが、出題地域に居住する受験生が有利になりすぎないような工夫が上手くなされてきた印象がありました。その意味で、例年と比較しても第2問 問3は、居住地域によって有利不利が明確に分かれてしまう問題であったかもしれません。


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