
河合塾講師が語る!2025年度新課程入試 ―世界史編―[後編]
■ 受験時の科目選択、志望動向への影響(課程変更に伴う生徒の変化の有無②)
――先ほど「『歴史総合』は、日本史選択者の方が負担が大きい」といったお話もありましたが、他方、世界史選択の生徒たちは、『歴史総合』ひいては日本史の内容が入試で出題された際、どの程度負担を感じるのでしょうか。あくまでも常識の範囲として捉えているのでしょうか。
現状、入試で出題されているのは常識の範囲ですね。戦略的な話になってしまいますが、入試では満点を求められているわけではないため、まずは『世界史探究』の範囲でしっかりと点を取り、『歴史総合』の範囲は、『世界史探究』の知識で対応できるところまでなんとかしよう、と判断しているようすでした。
――無理に日本史の内容に時間をかけるよりは、世界史の内容で確実に点を取っていこうと。
そのような感じがしますね。また、2025年度は新課程入試初年度で、どの大学も移行措置をとっていましたから、作問上の配慮も大いにあったと思います。むしろ、次年度以降の入試問題がどう変わるかが気になるところです。従来通りの形式を貫く大学、『歴史総合』を問題にしっかりと組み込んでくる大学など、各大学の作問方針の違いがより明確にあらわれてくるでしょう。
――今回、『歴史総合』と並んで、『地理総合』『公共』も必履修科目となりました。このことは、世界史を選択する生徒の視点や考え方に変化をもたらしているのでしょうか。例えば、地理の知識が身についているから、今までよりも話が通じやすいなどの印象はありますか。
まだありませんね。ただし、2025年度以降担当する生徒は、大学受験科生も含めて基本的に新課程で学んできた人たちです。彼らと関わる中で、「これまでの生徒たちとは少し違うな」と感じる場面が出てきたら面白いですね。
また、例えば地理に関して言うと、地誌分野などは世界史とも直接かかわりますが、『地理総合』で世界地誌は扱わないのですよね?
――地誌を扱うのは『地理探究』ですね。
そうすると、『地理総合』で学んだことと世界史とは、直接は結びつきにくいかもしれません。けれども、例えば『地理総合』の「国際理解と国際協力」という項目に関しては、『歴史総合』とも合わさって、『世界史探究』の現代史へ相互の乗り入れができる可能性はあります。また、「地図や地理情報システム」は、歴史学習との直接的なつながりは薄いものの、今後必要となる力であることに間違いありません。
――ちなみに、受験時の選択科目として、文系生は歴史、理系生は地理といった棲み分けは、現時点ではまだ変わらないでしょうか。理系生で、1年次に『歴史総合』を学んだことで「共通テストも世界史で受験しよう!」と考えるような生徒は、少なくともまだ現れませんか。
それも2025年度の大学受験科生からどう変わるかですね。現時点(2025年3月)では、まだ予測がつかないです。
ただし、生徒の志望動向に関しては、出題範囲に『歴史総合』を含む大学と含まない大学があることで、併願の仕方が変わってきます。第一志望の大学が出題範囲を『探究』に限定している場合に、併願先も出題範囲を『探究』に限っている大学を選ぶケースは、まま見られます。
2025年度の入試だけでも、『歴史総合』をしっかりと出題してきた大学、用語レベルの出題だった大学、『歴史総合』は出題せずに、出題範囲を『探究』に限定した大学など、さまざまありました。受験生が本年度の入試をどこまで詳細に見ているか定かではありませんが、次年度以降、志望動向はどのように変わっていくのでしょうね。