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【Ⅲ.学生の変化】Part.1「学生のメンタルヘルスと休退学」-全国国公私立大学学長アンケート2024-2025 詳細分析-

メンタルヘルスに問題を抱える学生の増減と、休退学者の増減の関係について

設問Ⅲ-1~3の結果について、クロス集計を行った結果を図22にまとめた。

図22 設問Ⅲ-1~3のクロス集計

「メンタルヘルスに問題を抱える学生が増加した」大学において、休退学者の増加とそれほど強い関係は見られない(A1)。よって、メンタルヘルスに問題を抱える学生の増加が、休学・中途退学者の増加に直接大きな影響を及ぼしているとは言い難い。学生の休退学には、メンタルヘルスの問題以外にも、さまざまな要因が複雑に絡んでいるのだろう。

しかしながら、「休学者が増加した」大学において、メンタルヘルスに問題を抱える学生は明らかに増加している(B1)。この傾向は「中途退学者の増加した」大学でも同様である(C1)。

以上より、メンタルヘルスに問題を抱える学生の増加が、休退学者の増加に直接影響するわけではないものの、休退学者の増加の一要因として、メンタルヘルスに問題を抱える学生の増加を挙げることは可能と考えられる。

ちなみに、休退学者数が「変わらない」あるいは「減少した」大学いずれにおいても、メンタルヘルスに問題を抱える学生は増加傾向にあるようだ(B2・3およびC2・3)。

また、「メンタルヘルスに問題を抱える学生が減少した」大学において、休退学者も減少しているかについては、サンプル数が少なく判断し難い(A3)。


「休学者が増加した」大学において、中途退学者増加とそれほど強い関係は見られず、休学者の増加が中途退学者の増加に直接大きな影響を及ぼしているとは言い難い(B1)。ただし、「中途退学者が増加した」大学では、その約8割で休学者も増加している(C1)。
加えて、「休学者が減少した」大学の約65%で、中途退学者も減少していることが分かる(B3)。


なお、設問Ⅲ-1~3に全て「増えた」と回答した大学は、345校中61校(17.7%)であった。内訳は国立大学が3校(国立大学の7%)、公立大学が5校(公立大学の9%)、私立大学が53校(私立大学の21%)である。

また、設問Ⅲ-1~3に全て「減った」と回答した大学は3校で、いずれも収容定員1,000~5,000人規模内の国公立大学であった。


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集計・分析・執筆:山口夏奈(KEI大学経営総研 研究員)

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