
【Ⅲ.学生の変化】Part.1「学生のメンタルヘルスと休退学」-全国国公私立大学学長アンケート2024-2025 詳細分析-
■ 設問Ⅲ-3 退学者の増減について
設問Ⅲ-3では、2019年以前と現在を比較し、「中途退学者の増減」を問うた。
全回答数345校中84校の大学(24.3%)が、コロナ禍以前と比較して「中途退学者が増えた」と回答。しかし、「中途退学者が減った」と回答した大学数がそれをわずかに上回り、89校(25.8%)あった。なお、「増えた」および「減った」と回答した大学の設置区分の内訳は図17の通りである。

図16 中途退学者の増減について(全体)

図17 中途退学学者が「増えた」および「減った」と回答した大学の内訳(設置区分)
【設置区分】
国立および私立大学で、「中途退学者が減少した」と回答した大学の割合が全体値を上回った。ただし、私立大学については、「増えた」の割合も全体値より5ptほど高い。なお朱字は、各回答の設置区分に占める割合が全国値を上回ったものを示す。

図18 設問Ⅲ-3(設置区分別)
【本部所在地】
エリアごとに異なる傾向が見られた。全体版とおよそ同様の傾向を呈すのは、甲信越、九州である。
「中途退学者の増えた」大学の割合が全体値を上回るエリアは、東北(37.5%)、埼千神(31.4%)、北海道(30.4%)、四国(30.0%)、近畿(29.8%)、九州(27.3%)、東海(25.0%)である。中でも東北の私立大学は、全区分において唯一、「中途退学者の増加した」大学数が、「変わらない」「減った」を足し合わせた大学数と同数以上になった(他の区分では、「増えた」と回答した大学数は、「変わらない」「減った」を足し合わせた大学数を下回っている)。
反対に、「中途退学者の減った」大学の割合が全体値を上回るエリアは、東京(37.7%)、東海(35.0%)、埼千神(31.4%)、甲信越(29.4%)、北関東(27.8%)、九州(27.3%)であり、関東圏が多くみられた。なお、埼千神、東海、九州は、「増加」・「減少」ともに全体値を上回っている。加えて、埼千神はエリア内において、中途退学者の増えた大学・減った大学・変わらない大学の割合がほぼ同値であった。

図19 設問Ⅲ-3(本部所在地別)
【収容定員】
大学の規模が大きくなるに比例して、「中途退学者が減少した」大学の割合も上昇。また、小~中規模大学では、その3割程度の大学で中途退学者が増加していると分かる。

図20 設問Ⅲ-3(収容定員別)
以上より、中途退学者の増減については、設置区分、本部所在地、収容定員ごとに全体版とやや異なる傾向を示すものがいくつか見られた。
さらに、「中途退学者が増加した」と回答した大学84校について、設置区分を基準にクロス集計を行った結果が図21である。なお朱字は、本部所在地別、収容定員別の集計において、全体値よりも高い割合を呈したものを示す。

図21 設問Ⅲ-3で「増えた」と回答した大学(区分のクロス集計)
国公立大学のサンプル数が少ないため、設置区分による比較が困難であるが、例えば甲信越は、エリア全体でみると全体版とほぼ同様の傾向を示し、「中途退学者が減った」と回答した大学の割合も3割近くに上るが(図19参照)、本クロス集計を見ると、国公立大学では「中途退学者が増えた」大学の割合が0%であるのに対し、私立大学では44.4%になっている。甲信越エリアでは特に私立大学で、中途退学者が増加していると考えられる。
設置区分と収容定員とのクロス集計も、上記同様、国公立大学のサンプル数に乏しいため、説得力に欠ける部分があるが、設置区分に関わらず小~中規模大学の方が、大規模大学に較べて「中途退学者が増加した」大学が多い傾向が見られる。


