武蔵大学 国際教養学部 東郷 賢 学部長インタビュー

■ 東郷学部長が推薦する2冊 

● 野矢 茂樹 著『論理トレーニング』(産業図書) 
東郷学部長が武蔵大学に着任した当初、「学生が書いた小論文を読んでも、論理構造が追えず意味が分からなかった」という原体験から、ゼミで使い始めた一冊。「論理的で分かりやすい文章を書く技術は、一生ものの武器になる」と語る。卒業生からも「社会に出てから本当に役立った」という声が多く寄せられている。東郷学部長はとくに旧版を推す。 

● ダロン・アセモグル/ジェイムズ・A・ロビンソン著『国家はなぜ衰退するのか』(早川書房) 
経済成長論が専門の東郷学部長が、「現在の日本がなぜこれほど長期停滞しているのかを考えるうえで、ぜひ読んでほしい」と薦める一冊。包摂的な制度が経済的繁栄をもたらし、収奪的な制度が国家を衰退させるという壮大な歴史分析は、日本の高等教育と社会の関係を考える上でも多くの示唆を与えてくれる。


おわりに

東郷学部長へのインタビューを通じて見えてきたことは、武蔵大学国際教養学部のPDPが、単なる一大学のユニークな取り組みにとどまらず、日本社会全体に向けた一種の「社会実験」として位置づけられるプログラムだということである。日本の大学教育が長年抱えてきた課題に対し、「世界標準の学びを日本で実装する」というかたちで、具体的かつ実践的な一つの解を提示している。 

PDPは、日本の高等教育システムに対する「ストレステスト」と言ってもよいだろう。日本の大学は、このグローバルスタンダードに適応していけるのか。それとも、PDPのような先駆的なプログラムは、その卒業生が国内よりも海外で高く評価される「孤高の存在」のままなのか。 

武蔵大学国際教養学部のPDPは、今年10周年を迎え(2025年)、国際的に活躍する人材を確実に輩出してきている。PDPのこれからの歩みは、日本の大学が「学びの場」としてさらに飛躍できるかどうかを占う、重要な試金石になる。PDPの試みは、大学教育に関わるすべての人びとに、その問いへの応答を静かだが確かに迫っている。 


東郷 賢 学部長 プロフィール:  

東郷学部長の写真

武蔵大学 国際教養学部学部長
2022年 武蔵大学国際教養学部長
2006年 武蔵大学経済学部教授
1998年 武蔵大学経済学部助教授
1996年 Yale大学大学院経済学博士号(Ph.D.)取得
1992年 日本輸出入銀行退職
1986年 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、日本輸出入銀行(現国際協力銀行)入行
1984年 早稲田大学第一文学部美術史学科卒業

主要業績:

【著書】
Miraculous Growth and Stagnation in Post-War Japan, edited by Koichi Hamada, Keijiro Otsuka, Gustav Ranis, and Ken Togo, Routledge, 2011

【論文・論説等】
“Productivity Convergence in Japan’s Manufacturing Industries,” Economics Letters, Volume 75, No.1, pp.61-67, March 2002, North-Holland.
“The Development of the Malaysian Plastic Industry,” Malaysian Journal of Economic Studies, Vol.XXXXIII, Number 1&2, June/December 2006, pp.97-111, Universiti Malaya.


インタビュー:原田 広幸(KEI大学経営総研 主任研究員)
インタビュー+記事/編集:三品 健(KEI大学経営総研 研究員)
編集:阿部 千尋(KEI大学経営総研 研究員)

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