なぜ女性弁護士は少ないのか? 法学教育の今(早稲田大学)

法学部におけるジェンダー・ギャップの根源

石田:司法試験も大学受験と同じような状況だと思うんですよね。日本の司法試験は、成績の上位者から合格させるという制度で、司法試験そのものの制度上の差別は絶対にありません。けれども、そもそも女性志願者が4割いないという現状ですよね、これはいつから始まるかというと、高校から大学に進学するときです。とくに、どうやら親が娘が法学部へ進学するのを好しとしない、という現状があるようです。「法学部なんてやめておきなさい、あなた将来パートになったときに、いじめられるわよ」と言われたとか(笑)。信じられないとか思うかもしれませんが、本当の話です。

コロナが始まる前のことですが、早稲田では、入試広報の一環として、女子大への訪問説明会を全国的にやっていたんです。あるとき、説明会を終えると、1人の女子生徒がこちらにやってきて、「私はロースクールに行きたいんですが、親が反対なんです」という。これは本当にありふれた現象で、地方の子どもがいる家庭では、男の子は東京に出すけれども女の子は出さないとか、女子は大学までは行かせないとか、法学部には行かせないとかということがよくあります。これは、女性の教育格差としても深刻な問題ですが、女性が法学を学ぶことへの大きな障壁になっていると考えています。

石田:そもそも法というものが一般市民からも遠いのです。法律は女性ではなく男性が関わるものだ、という考えも、保守的な地域ではまだ残っているところが多いと聞きます。だから、女子生徒が法律を勉強したいとなると、「いや、文学部や家政学部にしておきなさい」、ということになる。

また、司法試験業界に関して言うと、2010年から2014年くらいまで、弁護士が増えすぎて仕事がなくなっているという、ものすごいネガティブ・キャンペーンが張られたことがあります。ランチはおにぎりしか食べられない「おにぎり弁護士」がいるとか、新聞で取り上げられて。急激に弁護士人口が増えた時期です。

もちろん、今はもう、こんなキャンペーンは張られていませんし、本当は、弁護士はむしろ足りないくらいなのが現状なのですが、このような報道の記憶が親の世代に染みついているのかもしれません。

だから親からしてみれば、子どもに進路を相談されても「弁護士なんかやって食べていけるの?」となってしまう。苦労して法科大学院出て司法試験に受かっても20代後半になっていて、「いつ結婚できるの」と。そもそも、女性弁護士なんて結婚できるの?と思っている親もいる。こんなことは、男性だったら言われませんが、女性だといまだ言われることも多い。このような圧力は根強いです。

石田:はい、だから、私たちは、高校への行脚をはじめようとしています。とくに女子高に対して、女性の弁護士と私とで出向いて、女性弁護士って、こんなにやりがいがあって、こんなに楽しいよ、ということを伝えていこうと思っているんです。

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