運動部学生の履修計画へのコミットメントが「学生募集」を改善

◆「履修計画書」から始まった好循環、学生募集や地域連携も

木村さんは、学生募集の際にも、こうした取り組み・サポート体制を、高校側や保護者に伝えるようにしている。北陸大学(部)を評して、「とても面倒見がよい大学、チーム、指導者だ」と言ってくれる人も増えてきた。評価され、評判が上がると、全国からの入学者も増えてくる。こういった不思議だが必然的な流れが出てきたのが今回の取り組みの大きな収穫だ。

当然、学生の留年や退部もなくなってきている。昨今では公務員の内定が出たり、経営者になる者も出てきたりと、幅広い就職実績が出てきている。

さらに、本学卓球部では、学業成績や理解度が上がることで、学生1人ひとりが企画立案力も向上しているようだ。たとえば、学生自らが企画・立案し実行する地域貢献活動では、以下のような取り組みが次々と行なわれている。

・石川県内外の小中学生向けの卓球大会を開き、運営を行ったり練習相手になったり、盛り上げようと着ぐるみを着たりして、行なう普及活動。

・学生の居住地区、キャンパス内、キャンパス間を中心に実施する清掃活動。コロナが落ち着いた2021年度にハロウィンが再開したとき、1人の学生が「ハロウィン後の繁華街って誰が清掃しているんですか」という疑問から調査が始まり、地元の商工会議所と連携して企画書を作り、清掃活動を実施。

・大学近辺の金沢市をはじめとした自治体と「雪かきボランティア協定」を締結し、毎年要請に応じて学生が出動している。

・小学校の通学見守り隊を組織し実践。小学生からたくさんのお礼状をいただき、その小学校のおたよりにも掲載された。

これらの活動は、すべて学生が地元の方々と交渉し企画から実行までを行なっている。このような活動を通じて、学生はたくさんの方から応援されるようになり、地元企業によるスポンサー契約まで獲得するようになった。学生が主体的、かつ継続的に活動していることへの地元からの「応援したい」という声が、スポンサー契約につながった。

木村監督は続ける。「卓球部のチームスローガンは、“おめでとう”より“ありがとう”と言われるチームへ」。

「優勝おめでとうとか、インカレ出場おめでとうとか、競技をしていると“おめでとう”という言葉をよく聞くのですが、“ありがとう”って言われる機会ってどれぐらいあるか。箱根駅伝やWBCに優勝すると“感動をありがとう”と言われますね。そういう言葉に変えていかないといけないと思いまして、まずは大学生がやれる地域貢献活動から始めて、“ありがとう”と言われるチームにしていこうと。そうすることによって、卓球競技の成績も、社会人基礎力も高めていきたいと思っております。大学は最後の教育機関ですので、勉学にも課外活動にも重きを置いて指導しております。」

学生と部活動の監督が「履修計画書」を一緒に作成することが、学業成績向上だけでなく、学生募集、ひいては地域との連携までつながっていく。好循環の決め手は、計画書というツールを介した、教職員と学生のコミュニケーションにあったのではないか。


記事構成:KEIアドバンス コンサルタント 阿部/原田

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