東京出身者が有利な東大入試 教育格差もコロナものり越え「地方高校生に、追い風を」おこせ  [インタビュー] 【独自記事】


インタビューした方:FairWind代表 牛丸由理佳さん
薬学部3年在籍/岐阜県鶯谷高校出身


牛丸:私自身が中学生の時に、FairWindと出会ったのがきっかけです。東大を目指そうと決意できたのもFairWindのおかげなんです。

牛丸:はい。私は、岐阜県の中高一貫校に在籍していたのですが、中学3年の時に、同校出身の東大生がFairWindのメンバーとして、東大ツアーを企画してくれました。それに参加したんです。

牛丸:現在、私たちが現役のFairWindのメンバーとして行っている東大ツアーとほぼ同内容なのですが、中学・高校生と東大生がいくつかのグループになり、東大の各校舎を回って案内しながら、プレゼンをするというものです。実際に東大生に案内してもらいながら東大の校舎を巡ると、中高生のモチベーションもグンと高くなります。

牛丸:私は中3の時に参加したのですが、ツアーでプレゼンをしてくれたA先輩(東大生)が、「自分は天才でもなんでもない、きちんとした努力をすれば凡人でも東大に合格できる」と話してくれたことがダイレクトに響き、受験勉強に一層力を入れるようになりました。私でも本当に東大に行けるかも、と思えるようになったんです。それまでは、学校の先生から「(東大に行った)A先輩は天才だ、別格だ」と聞かされていたのですが、間近で東大生の実像に触れることで、東大進学のリアリティーが増したのだと思います。

FairWind代表 牛丸由理佳さん
(薬学部3年生)

牛丸:FairWindの活動には、(1)東大ツアー、(2)地方の学校での出張イベント、(3)オンラインセミナーの3種類があります。コロナ禍の昨年までは、もっぱらオンラインセミナーでしたが、最近は対面でのイベント実施が増えています。

牛丸:オンラインセミナーでは、ツアー代わりに、大学内を撮影した動画や写真を見せながら進行します。参加者は、少なくて数十名、大きいものだと300名くらいが参加してくれていました。また、コロナ禍をきっかけとして運営のオンライン化を進めました。基本的に1・2年生中心の駒場キャンパスで活動している中で、(本郷キャンパスの)3、4年生も運営会議に出やすくなったのは良かったと思います。

牛丸:Webの広報がうまく機能しているとか、HPのデザインが洗練されているとかは、この方面に強い先輩のたまものですね。なにせ、メンバーは約220名いますので。東大生の特技は千差万別です。

牛丸:Webだけではありません。基本的にFairWindの認知を広げたのは、メンバーの母校を中心としたネットワークです。母校の先生も、転勤しても赴任先を紹介するなど協力してくれています。地方出張イベントの学校も、このようなネットワークで広がっていきます。

牛丸:出張先の高校からは、交通費や宿泊費など実費のみ負担してもらいますが、謝礼はいただいていません。

牛丸:FairWindは「地方高校生に、追い風を」という理念を掲げてやっています。ここで問題となっている「地方格差」とは、地方の高校生は都市部の高校生に比べて、進学において不利に立たされている事実を意味します。地方の学生は、環境や情報面で不利な状況に置かれており、近くにロール・モデルになる先輩が少ない(ほとんどいない)のが問題です。現在では、インターネットの利用が増え、情報は、得ようとすれば得られるはずです。しかし、実際のところ、きっかけがなければ必要な情報は得られない。私の出身校でも、東大に行く人は数年に1人しかいませんでした。東大合格者は、天才扱いで、別格として伝説のように語られるだけで、実際にどう勉強したのかなどのノウハウも共有されにくいのです。これでは、どうせ自分には無理だと思ってしまいます。

牛丸:そうですね。私の場合、FairWindの先輩がロール・モデルになってくれたおかげで、東大をあきらめずに頑張れましたが、地方では、めったにこういう人には会えないですからね。このようなロール・モデルを示すというのがFairWindの使命だと思っています。


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