大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部 インタビュー[前編]
■大阪工業大学におけるデザイン思考教育
Q: デザイン思考の第一のプロセスである「Empathize(共感)」について、「共感する」ということは、考えようによっては教えられるものではないような気もしてしまうのですが、「『共感する』ことを学ぶ」とは、いったいどういうことなのでしょうか。
デザイン思考の5つのプロセス
(出典:大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部ホームページ(https://www.oit.ac.jp/rd/outline/design.html))
井上:例えば、目の前にいる人がどういう意識を持っているのか、もし自分が相手の立場だったらどう思うか、といったことを、インタビューや観察を通して少しずつ探っていくようなプロセスが「Empathize(共感)」です。自分が共感しやすい人だけでなく、全く興味のない、初対面では共感しようもないような人が対象であったとしても、「この人は何を考えているのだろう」、「何に困っているのだろう」ということを、徐々に自分事として考える。いわばトレーニングだとお考えください。
コロナの影響で一時期オンライン授業になり、対面での接触が少なくなったことに加え、近年は汚いものや危険なものから子どもたちを遠ざけるように、時代が変化しました。その結果、子どもたちが直接的に何かを経験する機会が一気に減ってしまい、共感力、すなわち、相手が何を考えているのかを感じ取る力が衰えてしまった、少なくとも、そうしたことを学べる機会が減ってしまったように感じます。
加えて、今は自分の好きなものだけを選ぶことができる時代でもあります。そうした中で、極端にいえば興味の対極にあるような、普段ならまったく興味を持たないであろう対象にも、デザイン思考を通して触れられる機会があることは、特にコロナ禍以降、より重要な意味を持ったように思います。興味が湧きにくい対象ほど、積極的にコミュニケーションをとらないと、なかなか共感に至ることはできませんから。