大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部 インタビュー[前編]
Q:デザイン思考の習得と偏差値との間に相関関係はあるのでしょうか。それとも、トレーニング次第では誰でも身につけることができるものなのでしょうか。
井上:こちらも私個人の感覚による回答となりますが、偏差値の高低とデザイン思考の出来不出来は、私は別であるように思います。試験で試されるのは、そのほとんどが記憶と再生です。他方、デザイン思考で要求されるのは主として発想力であるため、正解を覚え、単に再現するような記憶力は、ほとんど関係ありません。
しかし、重要なのはここからです。デザイン思考においてアウトプットの質も追求する場合、やはり基礎学力や基礎知識を備えているほうが、必ず良いものができると私は思います。なぜなら、いくらデザイン思考のプロセスを使ったとしても、基礎知識がない状態でアウトプットの質を高めるのは非常に困難だからです。
例えば、頭の中に知識が10個ある人と100個ある人を比べると、アイデアの引き出しの差は歴然ですよね。そしてそれに伴い、アウトプットの質も大きく異なってくることは想像に容易いでしょう。
したがって、デザイン思考を実践し、なおかつアウトプットの質も高めようとすると、基礎学力や基礎知識も必要となってくると私は考えます。デザイン思考といえども、ゼロからは何も生まれません。以上を踏まえると、デザイン思考とは、頭の中にある個々の知識を組み合わせる、その発動のスイッチのようなものだと言えるのではないでしょうか。
また学生たちも、「知識は10個しかないより100個ある方が有利だ」ということが経験的に分かると、学びに対するアプローチが変わってきます。より勉強に励むようになったり、モチベーションが変化していったりする様子は、よく見受けられますね。
Q:デザイン思考教育の成果を感じた出来事についてお聞かせください。
井上:本学部ができて早7年となりますが、デザイン思考を繰り返しやってきたことで、学生たちの学びの活動に成果が出てきたように感じます。
2023年のレスキューロボットコンテストにおいて、本学部の学生チームである梅田ロボットプログラミング部「UP-RP(ウーパールーパー)」が、「ベストロボット賞」「日本ロボット学会特別賞」「消防庁長官賞」「計測自動制御学会特別賞」の4冠と、最も権威ある「レスキュー工学大賞」を受賞しました。
「レスキューロボットコンテスト」に出場し、UP-RPが「レスキュー工学大賞」を受賞しました|トピックス | 大阪工業大学 (oit.ac.jp)
彼らは他チームが作らないような形のロボットを作ったり、あるいは他チームが考えつかないような機能を付け加えたりしていました。彼ら自身はそれをデザイン思考の成果とは言わないかもしれませんが、私はこれぞまさしく、デザイン思考の成果だと思います。「課題解決のためには具体的に何をしないといけないのか」を無意識に考えることができており、それがアウトプットとして出てきたのではないでしょうか。
ちなみに、本学部には3学科がありますが、学生たちは学科を越えた横断的な取り組み、例えばこうしたロボットコンテストのような正課以外の活動においても、割とすぐに打ち解け、取り組み始めることができます。これは本学部の学生気質の一つでもありますね。