KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『高校入試と内申書』中村 高康 著 (中央公論新社)

良い子競争を生む「抑圧」か、選抜試験の「救済」の制度か

■本の内容

関心・意欲・態度をどう評価するのか――。入試や生徒に大きな影響を与える内申書の実像を、全国調査結果のデータから検証する。


【著者】

中村高康(なかむらたかやす):
東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻(比較教育社会学コース)教授。1967年神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。東京大学助手、群馬大学講師、大阪大学助教授を経て現職。第2回社会調査協会賞。『大学への進学』『大衆化とメリトクラシー』『暴走する能力主義』など著書多数。

著書:『暴走する能力主義-教育と現代社会の病理』(ちくま新書、2018年)
編著書:『大学入試がわかる本:改革を議論するための基礎知識』(岩波書店、2020年)


■ 目 次 ■

序 章 高校入試と内申書の諸問題 中村高康
 1 高校入試ー日本中の子どもたちをふるい分ける巨大な選別イベント
 2 高校入試と内申書ーその歴史的背景
 3 内申書への注目
 4 本書の課題と構成

第一部 高校入試と内申書
第一章 内申書の社会学 中村高康
 1 内申書問題を社会学的に考える
 2 内申書の定義と制度的位置付け
 3 教育拡大と内申書制度の普及・定着
 4 管理・統制装置としての内申書
 5 内申書の二重性―救済と抑制 
第二章 各都道府県の高校入試における内申書利用の現状 田垣内義浩
 1 よくわかっていない利用状況
 2 都道府県ごとにみた内申書記載項目の状況
 3 都道府県ごとにみた学力検査以外の選抜の直接資料
 4 都道府県ごとにみた内申書と選抜方式
 5 内申書利用における都道府県ごとの多様性と共通性
第三章 社会調査からみる内申書の利用の実態とその変化 藤原翔
 1 本章の目的
 2 データ
 3 内申書は学校を選ぶうえでどの程度考慮されているのか
 4 内申書をどの程度意識して生活していたのか
 5 内申書を入試に使わないでほしいか
 6 今日のおける内申書の位置づけ
第二部 内申書の調査データ分析
第四章 調査の概要 中村高康
 1 高校入試をとらえる独自調査の意義
 2 入試制度と学校生活についての調査(2020年調査)
 3 高校入試制度と学校生活に関する調査(2020年調査)
 4 二つの調査による立体的把握を目指して
第五章 中学校生活は内申書に支配されているのか 中村高康
 1 内申書の中心問題ー抑圧の実態
 2 内申書を意識した行動ー内申書支配率の分析
 3 その他の内申書にかかわる意識・行動
 4 「内申書支配」の性格
第六章 内申書に対する中学生の反応類型ー階層と学力に注目して 伊藤美遥
 1 内申書が中学生の学校生活にもたらす影響
 2 データと分析手法
 3 内申書に対する中学生の意識と行動の4タイプ
 4 社会階層は内申書意識行動に影響するか
 5 学力は内申書意識行動に影響するか
 6 「良い子競争」に巻き込まれるのはだれか
第七章 中学生は内申書をいつから意識しているのか 山口ゆり乃
 1 中学生は内申書をいつから意識するのか
 2 内申書意識の変化パターン
 3 内申書意識時期は何と関係するのか
 4 意識の変化の多様性と制度との複雑な関係
第八章 内申書を否定するのは誰かー否定意識の背景としての内申点・親学歴・性別 田垣内義浩
 1 内申書の否定意識の背後にあるリアル
 2 内申書の否定意識の基本的特徴
 3 内申書の否定意識の規定要因
 4 親学歴と性別が内申書の否定意識を規定するメカニズム
 5 内申書の否定意識が生まれる2つのルート
第九章 内申点とジェンダー 山口ゆり乃
 1 内申点によって女性は入試にチャレンジしやすくなるのか
 2 内申点はどのように分布しているのか
 3 内申点が高ければ入試に有利になるのか
 4 内申点と入試制度の調整関係
第一〇章 地域ごとの入試制度と高校入試経験ー併願優遇制度に着目して 田垣内義浩
 1 東京都とX県における高校入試経験
 2 併願優遇と不合格経験や入試難易度の関係
 3 併願優遇利用の規定要因
 4 併願優遇利用の限界
 5 併願優遇制度の役割とその限界
終章 高校入試における内申書の特質と現代 中村高康
 1 全体を通じて見えることー「内申書の二重性」を中心に
 2 発展的考察
 3 政策的含意
 4 おわりに
あとがき



定価 2640円(税込)
刊行日 2025/3月24日

中央公論新社『高校入試と内申書』

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