TOPインタビュー

国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

電気通信大学 田野 俊一学長インタビュー[後編]

『共創進化スマート社会』を創る大学へ――大学IRのAI活用

本学では、「IMDAQ(イムダック)」という教育を標榜しています。IはInformation、MがMathematics、DがData science、AがAI、QがQuantum(量子)です。それを1年生から全て実験で体験する、というものです。
本学には情報からサイエンス、機械の学科まであり、1学年約700人の学生全員にIMDAQの基礎教育を行っています。このように、実験を通して学び、同時にAIを勉強する、という環境は重要で、そういったことを身に付けた人材は、今後必要だと思います。

4年前に、電気通信大学は『共創進化スマート大学』というビジョンを立てました。『共創進化スマート社会』を創る大学ということです。具体的には、全てのデータと全ての機能をインターネットでアクセス可能にして、AIを使ってそのデータから仮説を生み出していきます。その仮説をそのまま社会に出してしまうと、社会が爆発するかもしれないので、安定性や可制御性を検証して、OKであれば社会に実装します。
データと機能がオープンなので、つなぎ方を変えれば、リアルタイムでどんどん変更することができる。そういう社会を創るということが、電気通信大学のミッションになっています。


本学の『共創進化スマート社会実現推進機構』では、学生の全てのデータを集めて、それをAIで分析しています。
例えば、どの学生が、どのCBTでどのような成績で、どのように単位を取って、どんな企業に就職してどんな業績を挙げたのか、ということを分析しておけば、優秀な人材となるためにはこのようなカリキュラムで学んでいけばよい、という「王道」を学生に示すことができます。逆にこの授業はあまり役に立っていない、ということが出て来たら、内容や担当教員を変えなければいけない、ということもリアルタイムでわかります。

もっと単純な話をすると、学生は入学して半年くらいで、その後順調に学んでいけるかが決まるのですが、実は半年と言わず、ある特定の実習を3週間連続で休むと、それは退学していくシグナルだ、ということがあります。
ですから、AIが「この授業を何回連続で欠席すると退学する学生が多い」ということを検出して、学生の様子を常にAIが見張ることで、アラートを出したり、カリキュラムを変えたりする必要性がリアルタイムで分かる、ということになります。

この『共創進化スマート社会実現推進機構』では、IRデータを運営や経営だけでなく、教育そのものにも活用していく循環を作るという、いわば究極の大学IRのAI活用を目指しています。

電気通信大学(コミュニケーションパークと建物群)


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