
電気通信大学 田野 俊一学長インタビュー[前編]
■ 過程を評価するCBT試験、入学後の教育にも活用
――今回の入試では、学校推薦型選抜と総合型選抜の基礎学力テストにCBTを導入されました。大学入試センターとの共同研究として、国公立大学で実際に使われた初めてのケースだと思いますが、今回の成果や、今後どのように発展させていくか、お考えをお聞かせください。
一言でCBTと言っても段階があります。最初のステップが、マークシートを読み込んで瞬時に成績が出るもの。これは既に日本中どこでも使われています。
次のステップが、項目反応理論(IRT)に拠るもので、全員が違う問題を解くというタイプです。これは膨大な問題数のプールから、全員に異なる問題を与えてもきちんと成績がわかるものです。世界的には、項目反応理論で一定のレベルを推定するCBTはよく使われています。一方日本では、医学部や歯学部の学生が臨床実習の前に受験する共用試験や、情報技術者試験の午前の試験でこれが使われていますが、導入事例はあまり多くはありません。
この理由として、日本は入試のように合否を決める試験では、1点差刻みが好きだからです。全く違う問題を解いているのに、あなたは93点、私は92点というとき、その1点の違いの中に何人いるか、ということを気にするので、IRTを嫌がるのです。
本学のCBTは、さらにその次のステップを目指しました。これは、プログラミングの過程や、データサイエンスでどのような順序で分析をしたかという過程までを評価の対象にするものです。つまり、「解答を選びなさい」ではなくて、「プログラミングをしなさい」、「ツールがこれだけあるから、自由に使って答えを出しなさい」というもので、それも最後の結果が正解かどうかではなく、途中でこんな試行錯誤をしたから、この点数をあげますよ、という途中経過まで見るものです。これは情報の試験ととても相性が良いので、導入してみることにしました。