TOPインタビュー

国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

東京女子大学 森本 あんり学長インタビュー[後編]

エピローグ:勉強が仕事からの逃げ場!? 森本先生のリフレッシュ法

大学教員なら誰しも、教務の仕事に嫌気が差す時がきっとあると思います。そういう時に、自分の勉強の世界を持っているのはとってもいいことなのです。

つまり、私の仕事からの逃げ場は勉強です。大学運営のことなどさっぱり忘れて、自分の研究に没頭し、3日間ほどそちらに頭を使っていると、何だかすっきりします。

勉強が息抜きだなんて変なやつだと思われるかもしれません。ですが、自分のやらなければならない仕事とは全く別の世界を持っていることはとてもプラスだと思います。そのため、本を書く時間などは、私にとっては最高のストレス解消ですね。

皆さんもそうではありませんか?仕事と全く関係のない世界に浸っているとリフレッシュしますよね。私にとっては、それが勉強なのです。

三宅香帆さんの本、装丁や見かけに反して、中身はとてもしっかりしていますよ。私も読みましたが、よく考えられていると感心しました。明治時代からの歴史もきちんと押さえられています。とても良い本です。

その本にも書かれていましたが、今おっしゃられたとおりで、大人になってからの読書というと、仕事に関連した本など、やはり「何かためになる本」を選んでしまうんですよね。それは学者も同じです。余暇の本でも読もうと思うでしょう。でも、何となく自分の仕事や研究と関係ある本を探して読んでしまうんです。だめですね、そういうのは。全然関係のないものでないとリフレッシュになりません。

小説などを読みたいと思うんですけれども……。実は最近気がついたのですが、純文学の小説があまり読めなくなってしまって。情景描写などはどうでもいいから、話のストーリーをもっとさっさと進めてくれよ、なんて思いながら読んでしまうんです。

何となくそうなっちゃいますね。だからあまりよくないです(笑)。

私の読書歴を自分の人生と重ねて書いた本が最近出版されました。月刊誌『世界』(岩波書店)で連載していた「ボナエ・リテラエ――私の読書遍歴」というエッセイをまとめたものです。専門的な話もそれなりにしてはいますが、私が子どもの頃からどのような人生を送ってきたのか、その中でどのような本に出会ったのか、「なぜその本を面白いと感じたのか」を綴っています。中学・高校時代はどのような生徒だったのか、受験勉強をどう受け止めていたのか、大学選びはどうしたのか、なぜアメリカに留学したのか、留学先での生活はどうだったのか、なども書いていますので、きっと皆さんが読まれても面白いと思います。


東京女子大学 森本 あんり 学長

プロフィール
国際基督教大学教養学部人文科学科卒業、東京神学大学大学院、プリンストン神学大学院組織神学博士課程修了、Ph.D。
専門分野は、アメリカ思想史、哲学・倫理学、宗教学。国際基督教大学名誉教授。

1991年、国際基督教大学に着任。大学牧師、準教授を経て、2001年より人文科学科教授として教鞭を執る。2022年4月、同大学名誉教授、東京女子大学学長に就任。 

著書:
『魂の教育――よい本は時を超えて人を動かす』(岩波書店、2024年)
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『教養を深める――人間の「芯」のつくり方』(PHP新書、2024年)
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『不寛容論――アメリカが生んだ「共存」の哲学』(新潮選書、2020年)
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『キリスト教でたどるアメリカ史』(角川ソフィア文庫、2019年)
Amazon.co.jp: キリスト教でたどるアメリカ史 (角川ソフィア文庫) eBook : 森本 あんり: Kindleストア

『反知性主義――アメリカが生んだ熱病の正体』(新潮選書、2015年)
反知性主義 (新潮選書) | 森本 あんり |本 | 通販 | Amazon

など、多数の著作を発表している。


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