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  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

佐賀大学 兒玉 浩明学長インタビュー[後編]

地域が求める人材の育成を目指してーー理系融合知を育む新分野の設置【独自記事】


「地域に優秀な人材を輩出することは本学の役割の一つである。では、地域が求める人材を育成できる学問分野とはいったい何なのか」この問いに、兒玉学長は真摯に向き合って来られました。地方国立大学として、地域の課題解決と人材養成に尽力する先でたどり着いた答えは、先生のご経験にも連なる、理系融合知の育成でした。また、教育者としての兒玉学長の、学生に向けたあたたかな思いと期待も聞くことができました。

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すべての学生に支援を行き渡らせるために――ウェルビーイング創造センターの新設

人付き合いに苦手意識を持つ学生が多くなったと感じます。私が学生の頃は、それほど突出してアクティブな人もおらず、みな同じような感じでした。誰とでも仲良くなる、「友だちの友だちは友だち」といった感覚です。けれども、今はもう友だちになることはおろか、人と接すること自体が難しいという学生が増えていますね。 

また、これはご質問から逸れることかもしれませんが、コロナ禍になって、本学では退学率が大きく下がりました。 

大学の授業がオンラインになったことで、人と会わなくてよくなった結果、修学が思うように続けられた学生たちが結構いたのです。 

コロナ禍当時の報道では、「子どもたちのメンタルが心配だ」、「部屋に1人でこもっていて嫌だ」という“大人たちの声”が多く聞かれましたが、大学の教育現場ではむしろ逆でした。人に会わなくても授業を受講できていたので、人付き合いが苦手な学生たちはむしろ救われていたのです。 

例えば理系の学生で、実験を苦手としている人もいます。しかし、それは学力的に難しいということではなく、他者と協働して取り組むのが、その学生にとっては大きな負担なのです。

もちろん、本学にもカウンセラーはいますし、これまでもそのような学生への支援やカウンセリングなどを行なってきました。しかしながら、どうしてもケアしきれない部分があったように思います。 

他方、学生は入学試験を突破してきた一定の能力を備えた人たちです。我々がしっかりと指導をすることで、彼らは成長していけます。しかしながら、その手厚いサポートを全員にできるかと言うと、どうしても難しい。そうした葛藤がありました。 

この状況を打開するため、専門部署をつくり、学生支援にしっかりと取り組むべくつくられたのが、「ウェルビーイング創造センター」です(2024年4月新設)。「ウェルビーイング創造センター」は、大きくは学生支援センターで、理科系の女子を対象としたキャリア教育プログラムなど、さまざまなことに対応していきます。その数ある学生支援策の中で最も重きを置いているのが、障がいや特性のある学生への伴走支援です。 

先ほどお話したようなサポートを必要とする学生は、おそらく今、私たちが想像している以上に増えていると思います。何をしたら解決になるのか、正直正解は分かりません。けれども、彼らは一定の能力を備えた学生たちです。我々の支援不足で問題が解決できず、大学を辞める選択をさせてしまうことは絶対に避けなければなりません。何らか支援があれば、あるいは何かのきっかけさえあれば、さまざまな人と交わることができるようになる者もいます。そのためのサポートをしていくのが、「ウェルビーイング創造センター」なのです。 

この取り組みはひとえに、「すべての学生を一人前に育てたい」という思いによるものです。行政も非常に期待をしてくださっているので、頑張りたいと思います。 

佐賀大学 ウェルビーイング創造センター 学修支援部門 (saga-u.ac.jp) 

カウンセラーはもちろん、教員も置いていますし、コーディネーターも配置します。コーディネーターとは、大学教員の指導をしてくれる職員で、支援を必要とする学生たちにどのように接すればいいのか、あるいは、学生がこういう状態になったら話を聞くようにするとよい、などのノウハウを本学の教員に教えてくれます。 

また、ウェルビーイング創造センター設置以前から、本学では入学時に学生のメンタルチェックを実施しています。そこで特性のある学生をきちんと把握して、担当の教員が面談をし、履修指導を行なう、といったことをやってきているのです。そのため、本学の先生方にはすでに、ある程度学生のメンタルをケアすることへの理解があります。それを、ここで今一つ、先生方のFDを行なうことでさらに一歩進めて、次の段階に進めたいです。

一方で、「大学ではそれで良くても、社会に出てからはどうするのか」という意見もあります。それも一理ありますが、だからといって放っておくわけにもいきません。 


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