
武蔵野大学 小西聖子学長インタビュー
--これまでのお話で出てきた社会的な「成功」とは異なる、武蔵野大学が定義する「スチューデント・サクセス」について、お聞かせください。
小西学長: 本学が掲げる「スチューデント・サクセス」は、二つの側面から成り立っています。一つは、個々の学生が目指す将来像(なりたい自分)や目標達成等の自己実現に向けて、成長実感、達成感、納得感が得られる〝個人としてのサクセス〞。そしてもう一つが、建学の精神に基づく本学での特色ある学びを通して未来のウェルビーイング社会の創造及び形成に資するスキル、能力、マインドを修得する〝社会におけるサクセス〞です。私たちは、この両方を合わせてスチューデント・サクセスと定義しています。このサクセスの達成こそが、これまでお話ししてきたことの集大成。私たちは卒業時や(今後可能になれば卒業後)のアンケートなどを通じて、この達成をしっかりと把握し、教育の改善に繋げていきたいと考えています。
--最後に、教育関係者、もしくはこれから大学で学びたい人、ウェルビーイングに関心がある人に向けて読んでほしい本の紹介をお願いします。
小西学長: アーシュラ・K.ル=グウィンの『ゲド戦記』を紹介します。もう古典の域に入るファンタジーのシリーズです。魔法使いゲドが、自らの影と向き合い、また生と死を知り、成長していく物語です。自己と世界の均衡と限界を知り、その本質を受け入れていく過程は、自分とは何か、しあわせとは何か、よい世界とは何かを静かに問いかけます。
--ありがとうございました。
『ゲド戦記』
著者 アーシュラ・K・ル=グウィン
訳者 清水真砂子
出版社 岩波書店 (1976~2003)
武蔵野大学 学長 小西 聖子 (こにし たかこ)氏 プロフィール
1954年愛知県生まれ。1977年に東京大学教育学部教育心理学科を卒業後、東京都心理判定員を経て、1988年に筑波大学医学専門学群卒業、同年に医師免許取得。1992年に筑波大学大学院博士課程医学研究科修了 博士(医学)号取得。1993年に東京医科歯科大学の中で犯罪被害者相談室を日本で初めて立ち上げ、1999年に武蔵野女子大学(現 武蔵野大学)人間関係学部の開設に合わせ、人間関係学部人間関係学科教授に就任。武蔵野大学人間科学部学部長、同大学院人間社会研究科長、同大学心理臨床センター長、同大学副学長(グローバル、DEI、学生支援、ハラスメント担当)を歴任し、現 学長。
学外においては、精神科医として臨床に従事するほか、性犯罪の刑法改正に関して法制審議会の委員を二度務め、内閣府の女性に対する暴力に関する専門調査会会長、内閣府男女共同参画会議議員も務める。
主な研究分野は被害者支援、外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に関する研究。著書『ココロ医者、ホンを診る 本のカルテ10年分から』は第8回毎日書評賞を受賞。
インタビューと記事執筆:原田 広幸(KEI大学経営総研 主任研究員)


