
武蔵野大学 小西聖子学長インタビュー
■分野横断と生涯学習への展開
--カリキュラムについても、お聞かせください。ウェルビーイング学が提供する学びは、データサイエンス学部など、他の専門分野を学ぶ学生にとっても共通の基盤となりそうです。
小西学長:その通りです。現在、「副専攻」制度の導入が可能かの検討を始めました。本学には副専攻として既に「AI活用エキスパートコース」と「仏教プラクティスコース」があります。前述しましたが、AIを学ぶことはツールと「適切な距離」をとるためにも、大事だと思います。これからの時代、AIをうまく利用できないと、本来の能力が阻害されてしまうこともあるわけですしね。メンタルヘルス、アントレプレナーシップ(起業家教育)といったテーマ、もちろんウェルビーイングに関しても、まさに「誰もが学ぶとよい知識」です。これらを誰もが分野横断的に学べる仕組みを提供したいと考えています。
--今、仏教の話も出ましたが、大学教育における宗教の位置付けは、どのようにお考えでしょうか。
小西学長:本学の学祖である高楠順次郎(たかくす じゅんじろう)は、哲学としても仏教をとらえてきた人物。論理的な思考を促すという点では、大学教育と相性がいいと思います。「仏教に基づく人格教育」が本学の教育理念です。AIを使うのは人間だからこそ、この教育理念が大事です。
--アントレプレナーシップについても、お聞かせください。
小西学長:本学では、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を「高い志と倫理観を持ち、失敗を恐れずに挑戦し、新たな価値を見出し、創造していくマインド」と定義しています。このマインドは何を主専攻にするにしても、また就職するとしても学生たちがよりよい人生を拓く大きな力になるものだと思います。アントレプレナーシップとウェルビーイングは、社会人のリスキリングにもふさわしいのではないでしょうか。
--生涯学習の観点から、社会人教育への展開はいかがでしょうか。
小西学長:ウェルビーイングは、特に社会人との相性が非常に良いテーマです。日々の業務に追われる中で「この仕事は一体、誰の役に立っているのだろうか」と、仕事の意味を見つめ直したいと考える民間企業の社員や公務員の方々は少なくありません。ウェルビーイングの視点を学ぶことは、そうした方々にとって、新しい視点を得るリスキリングや、自らのキャリアを再発見する上で大きな助けとなるはずです。
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