甲南大学 中井伊都子学長 インタビュー[後編]
■授業では測れない個性的な挑戦も評価する
--本当にさまざまな彩りがありますね。お聞きしたいことがたくさんあるのですが、特に正課外教育についておうかがいさせてください。「KONANサーティフィケイト」という制度、すなわち、読書やボランティアなど、学業成績では表わすことができない努力や挑戦を評価する制度が非常に面白いと感じました。この制度がなぜ、どのようにつくられたか、また、学生の評判についてもお聞かせ願えますでしょうか。
4年間で専門教育や共通教育をしっかりと勉強し、いざ大学を卒業するとなったとき、彼らの手元に何が残るかというと、目に見える形で残るのは、たった一枚の成績表なのです。けれども、学生たちは学業以外にもたくさんのことに励み、身につけたことも多いはず。その頑張りを形にしてやりたいと、前学長がこの制度をつくりました。
グローバルで頑張った、後輩に勉強を教えることを頑張った、本を読んでそのおもしろさを他人に伝えることを頑張った……。そうしたさまざまな分野での頑張りを基準にしたがって顕彰する、学生個々の頑張りを見える化できる本学独自の取り組みが、KONANサーティフィケイトです。
--なるほど、ありがとうございます。特に学生からの評判がよかったり、これがサーティフィケイトにあって嬉しいという声がよく聞かれるものはありますか?
特にどの分野が、ということではないのですが、興味のあることに踏み出すきっかけになったという声をよく聞きます。例えばスポーツサーティフィケイトについては、体育会系の学生だけでなく、一般の学生でも、授業の基礎体育学演習から興味を持って取り組んでいくことでサーティフィケイトに認定されるのみならず、健康的な生活を送るためのセルフマネジメントが身につく点で喜ばれています。
また、努力を重ね、きわめていくことに役立っているという話も耳にします。例えばライブラリサーティフィケイトは、ひたすら読書をして己の肥やしにしていくだけではありません。上の級にすすむにつれて、POPを作り本の横に立てる、図書館におすすめの本を置き、その本の面白さや魅力を人に伝える、本の面白さを伝えるイベントを主催するなどが認定の基準となっています。
こうしたサーティフィケイトを通して、自身の成長を感じられたり、自己を展開できることが、学生にはよい刺激となっているようです。コロナ禍で随分落ち込みましたが、今では再び多くの学生がエントリーをして頑張っています。加えて、今年から新たにキャリアデザインサーティフィケイトを設置しました。今後も新たなサーティフィケイトをつくっていきたいと考えております。
なお、本制度のポイントは、決して授業でも正課でもない点です。例えば、内向的な性格で、ひたすら本を読みたいんだ!という学生が、無理に人前に立つ必要はありません。その学生の頑張りに見合った等級で顕彰することができるからです。個々の学生に合わせて、その頑張りを顕彰できる点でも、とても良い制度だと感じています。
-- 最近の学生は人前に立たされたり目立ったりするのは嫌がるかもしれませんが、評価されること自体は、やはり変わらず嬉しいのでしょうね。
そのようですね。