
関西大学 高橋智幸学長 インタビュー 「寄り道」を肯定することが学生の豊かな人生を構築する
■「自分の身は自分で守る」という米国の防災意識
--ご専門は津波防災とのことですが、サバティカルではどちらの大学を希望されていたのでしょうか。
高橋学長:ハワイ大学です。私の津波土砂移動シミュレーションモデルは日本で標準的に使われているので、米国のハザードマップにも応用したいと言っていただいています。その共同研究という側面もありますが、ハワイは防災を語る上でも重要な場所。太平洋の真ん中に位置するため、環太平洋のどこで巨大地震が起きても、発生した津波は必ずハワイを通過します。例えば、チリで起きた津波は24時間後に日本に到達しますが、その前にハワイで観測できる。この場所のデータを分析することは、日本の防災にとって極めて重要なのです。
--現地で研究される中で、日米の防災意識に違いは感じられますか?
高橋学長:明確に違いますね。米国では ”at your own risk” つまり「自分の身は自分で守る」という考え方が徹底されています。行政が何かしてくれるのを待つのではなく、警報が出れば即座に自ら行動する。この迅速さは素晴らしいと感じます。
--日本の場合はいかがでしょうか。
高橋学長:日本では、行政が助けてくれるという期待感が根強いように感じます。しかし、現実は厳しい。行政は災害の「発生前」の準備や、「発生後」の復旧・復興では大きな役割を果たしますが、災害の「発生中」は行政自身も被災しており、機能不全に陥ります。このギャップを埋める必要があります。
かつて日本には「災害文化」というものがありました。昔は頻繁に災害が起きていたため、「災害は起こりうるものであり、自分たちで対処すべきもの」という意識が根付いていたのです。しかし、防災インフラというハードウェアが高度化したことで、小さな災害は起きなくなり、人々は災害を経験しなくなった。その結果、想定を超える災害が起きた時に不意打ちを食らってしまう。ハードウェアだけに頼らない防災、つまり一人ひとりの主体的な備えと行動が、今こそ求められているのです。
(次ページに続く)


