関西医科大学 木梨 達雄学長インタビュー[中編]
■ 医学研究における国際化の推進――ダブル・ディグリー制度の締結と国外臨床実習
--実験器具に限らず、知識や研究そのものについても、今後は工学系や理学系とのコラボレーションが求められているのですね。
研究とは言っても、医学部の学生たちが物理学や化学の細かな知識を使って考えるということではありません。工学系・理学系の方たちとのコラボレーションにより、医学的な課題を解決するというスタンスです。こうした学際的な連携は、日本国内の大学間では行われている一方で、海外との共同研究が少ないことが指摘されています。
それを克服するには、いわゆる「国際化」という言葉にフォーカスされますけれども、医学部だけで、あるいは日本国内だけで閉じるのではなく、海外の大学との共同プログラムを作るなどして、盛んに医学部生と工学・理学系学生との交流の機会を提供していく必要があります。
実は本学でも、海外の大学との共同プログラムが2025年度から始まります。本学とイタリアのトリノ工科大学とで共同研究を行なっていることがベースとなり、両大学院間でダブル・ディグリー制度が締結されました。4年間で医学博士と工学博士の両方の学位が取得できるプログラムです。これも非常に楽しみですね。
--何人くらいが参加されるのでしょうか。
まずは双方の大学で、本プログラムに参加する意欲ある学生を数名選抜します。トリノ工科大学の強みは、特にナノマテリアル、組織エンジニアリング、ロボティクスやAIです。したがって、リハビリテーションや整形医学、再生医療系講座などの臨床系の学生にはぜひ参加していただき、整形やリハビリテーションに関するさまざまなデバイス作りに、その技術を活用してほしいと思います。
今後は、医学の研究も学際的・国際的にしていかねばなりません。そしてそれは、必ず学生の刺激につながります。
私がそれを実感したのは、国外臨床実習に参加した学生を見たときでした。国外臨床実習とは、医学部6年生の4月に欧米や東南アジアなどの海外の大学・病院へ行き、約1か月間経験を積むものです。ある程度英語が話せる学生を10~15名程度選抜し、派遣しています。そして、実習を終えて帰ってきた学生たちを見ると、皆、目をキラキラと輝かせているのです。
国外臨床実習に行くまで、学生たちは基本的に、日本の医療システムの中でしか勉強したことがありません。そのため、海外で学ぶということだけでも、彼らにとっては大きな刺激となります。
加えて、日本では教員が一方的に講義する形式の授業が多くありますが、欧米ではディスカッションが非常に活発です。互いにファーストネームで呼び合い、常に自分の意見を言うことが求められます。そうした文化的な新鮮さもさることながら、欧米では即実践に入るため、学生たちは本実習でしっかりと臨床の現場を体験することができます。このような経験を積んだ学生は、意識レベルが飛躍的に向上し、目の色がガラリと変わるのです。
このことからも、国際化は教育にとって本当に重要なのだと実感しています。だからこそ学長になった今、国際化を広く推進していきたいのです。