
共立女子大学・共立女子短期大学 学長 佐藤雄一氏インタビュー:変革する社会における「共立リーダーシップ」の真価と、女子教育の未来
4. 生成AI時代の知性と、言葉の「全体構想力」
生成AIの普及は、大学における言語教育や論文執筆の前提を根底から揺さぶっている。しかし、佐藤学長は、この事態を「人間固有の構想力」を磨く好機としても捉えているようだ。AIがパラグラフの生成を肩代わりする時代だからこそ、全体設計図を描く力、そして言葉の定義の変容を察知する感性が、新たな知性の要件となりうる。
インタビュアー: 生成AIの台頭により、教育の現場ではAIの利用価値についてさまざまな議論がなされています。学長は、AIがもたらす構造的変化をどう分析されていますか。
佐藤: AIは部分的な文章の生成には極めて長けていますが、論文全体を貫く「大きな構造」を構築する力、すなわち全体構想力においては人間に及びません。AIに指示を出す「プロンプト」一つとっても、自分の頭の中に論理的な設計図がなければ、質の高い出力は得られません。
インタビュアー: つまり、AIを使いこなすためにこそ、コンピュータ以前の「言葉の力」が必要になるという逆説ですね。
佐藤: その通りです。出力の正誤や妥当性を判定する基礎学力がなければ、AIに振り回されるだけになってしまう。特に危惧しているのは、単語レベルでの意味の変容です。例えば「主体性」という言葉一つとっても、世代や文脈によって解釈がズレ始めている。こうした言葉の揺らぎに敏感であること、そして全体を構想する力を養うこと。デジタル化が進むほど、人文知の価値は高まると考えています。

5. 権限なきリーダーシップ:共立が提唱する「自分らしい」貢献の形
共立女子大学が掲げる「リーダーシップ」は、トップダウン型の強い統率力とは一線を画している。それは、学生たちの「奥ゆかしく落ち着いた」気質を肯定し、Z世代の感性に寄り添った新しいタイプのリーダーシップであり、「権限なきリーダーシップ」と名付けられる。共立女子大は、女性社長の輩出数では、国内上位にランクインし続けているが、その実績は、こうした独自の教育方針が社会で実質的な力を発揮していることの証左ともいえよう。
インタビュアー: 貴学はリーダーシップ教育でも有名で、「リーダーシップの共立®」として知られていますが、貴学の学生たちが体現するそれは、世間一般のイメージとは少し異なるようですね。
佐藤: ええ。本学の学生は非常に落ち着いていて奥ゆかしい。中には、自ら前に出ることを好まないタイプの学生も一定数います。そこで私たちが提唱しているのが「権限なきリーダーシップ」です。役職や権限がなくても、他者と協働し、目標に向けて自分の役割を全うする力。これは現代のフラット化する組織で最も求められる資質です。
インタビュアー: Z世代の「目立ちたくない」という心理と、リーダーシップの概念を適合させているということなのでしょうか?
佐藤: いえ、世代に合わせて言うというよりも、「十人十色のリーダーシップ」があっていいという考えです。実際、本学は女性社長出身大学ランキングで10位(女子大では2位)という実績がありますが、彼女たちの多くは強烈なカリスマというより、誠実なフォロワーシップも含めた独自の貢献で信頼を築いてきたはずです。こうした意図せざる卓越性を育む環境が本学のDNAには脈々と流れており、現在はそれを明文化して強化している段階です。
インタビュアー: こうした独自の卓越性、つまり新しいリーダーシップの形や、自分らしい貢献の形が、貴学独自の環境で育まれているということですが、それは、女子大学という特定の環境でこそ最大化されているのでしょうか。
(次ページへ続く)


