
大阪経済大学 山本俊一郎学長 インタビュー「創発が日常になるキャンパス」
2. 「創発」を誘発する仕掛け:「場」のデザインと実践
ミッションに掲げられた「創発」というコンセプトは、自然に発生するのを待つだけでは実現しない。大阪経済大学の戦略の巧みさは、それを誘発するための「場」を意図的にデザインしている点にある。そして、それは物理的なキャンパス空間の改良から、学生の自発性を引き出すプログラム設計まで多岐にわたる。ここでは、学生たちの交流、協働、そして自発的な挑戦を促すための具体的な仕掛けについて掘り下げていく。
インタビュアー: では、「創発」を誘発する「場」づくりについて伺います。とくに、図書館の改装の仕方はとても印象的です。図書館の「静寂」を破るという決断は、伝統的な大学観を持つ教職員から反発もあったのではないでしょうか。その常識を覆してまで学生の「滞在時間」を重視された意図についてお聞かせください。なぜ、ハード面の刷新から始めたのでしょうか。
学長: おっしゃる通り、これは大胆な改革でした。以前は、授業が終わるとすぐに梅田(大阪の都心部)に遊びに行ってしまう学生も多かったのです。そこで、キャンパスに彼らを留まらせる「魅力的な空間」が必要だと考えました。そのための改革の象徴が図書館です。かつては静かで殺風景ともいえる場所でしたが、1階フロアは飲食も会話も可能にしました。プレゼンの練習をする学生や、読書会を開催する学生、ディスカッションを交わすグループなどの様子が、他の学生からも「見える化」されるようにしました。そうして、知的活動の輪が広がることを狙ったのです。


図書館で、”読書対話ワークショップ “ほんのれん”を実践する学生たち
インタビュアー: 学生の熱気が、他の学生を触発するわけですね。物理的な空間改革は他にもありますか?
学長: はい。C館を増築した際には、1階にハンモックを設置するなど、一部の教員からは「何だ、これは(けしからん)」と言われるようなリラックスできる空間をあえて作りました。デザインにもこだわり、「おしゃれ」な雰囲気も意識しています。限られた空間だからこそ、居心地の良さを追求することが重要だと考えています。


C館「リフレテラス」はおしゃれなオープンカフェのよう/ C館1階のラウンジ内
インタビュアー: なるほど。ハード面についてはわかりました。では、ソフト面、つまり仕組みとしての「場」についてはいかがでしょうか。
学長: これまで教員の個人的な繋がりに依存しがちだった企業や地域との連携を、組織的に推進する必要がありました。そこで、2年前に「社会連携センター」を設立しました。企業や自治体からの課題をセンターに一元化し、専門分野の教員のゼミや、関心のある学生プロジェクトに繋げるハブとして機能しています。
インタビュアー: 学生が主体的に活動できる「場」もあるのでしょうか。
学長: 「教育・学習支援センター(SCTL)」がその役割を担っています。とくに、学生が自発的に始めたプロジェクトを大学として支援する仕組みがうまく機能していますね。例えば、卒業式で廃棄される花を「ロスフラワー」として再利用した活動や、聴覚に障がいを持つ学生が入ってきたときのために「大学公式の学歌の手話を作るべきだ」と、学生たちが自ら手話を生み出した活動などがあります。

インタビュアー: これらのプロジェクトは、まさに学生の中から「創発」が生まれた象徴的な例ですね。
学長: そうなんです。私がとくに感銘を受けたのは、手話を作った学生たちは、ただ単語を当てはめるだけでなく、「大学の成り立ちや歴史まで深く勉強しないと、その精神性を正しく表現できない」と考えて、理解を掘り下げてくれたことです。最近では、学生たちが自分たちの活動を指して「これって“創発”じゃないですか」と言ってくれるようにまでなりました。教職員がとくに誘導したわけではないのに、自発的に理念が浸透しているのは、非常に嬉しいことですね。
インタビュアー: 学生たちの活動がこれほど活発だということは、それを支え、刺激を与える教員の質も非常に高いレベルにあるのだと推察します。教育の質は、教員の研究活動と密接に結びついているはずです。
「創発」を教職員が発信する取り組み :Talk with | 大阪経済大学
(次ページへ続く)


