
【1校】奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[前編]
タイトル【独自記事】
関西を代表する進学校の一つ、西大和学園高等学校。その創始者であり、西大和学園グループを牽引するのが田野瀬良太郎氏である。現在は大和大学の総長としてその手腕を発揮しているが、西大和学園ブランドを確立させるまでには、年表から読み取ることのできないたくさんの苦労があったという。政治家を志していた田野瀬総長がいかにして教育と出会ったのか、西大和学園はどのような軌跡をたどり、現在のブランドを築き上げたのか。そこには常に、夢と目標を持って走り続ける田野瀬総長の姿がありました。
【目次】
■ 教育との出会いは政治家浪人時代の保育園づくり
■ 西大和学園ブランド確立前夜の物語① 開学後の路線変更
■ 西大和学園ブランド確立前夜の物語② 路線闘争~進学校路線確立
■ トップは夢を語らねばならない
■ 西大和学園カリフォルニア校の軌跡
■ 大学づくりへの挑戦――白鳳女子短期大学の設立
▶後編 大志を、まとえ。――「東の早慶、西の大和」への挑戦
■ 国立女子大が果たすべき使命 -女子大の大学院が担う役割と、「女子枠」への提言-
――貴学は西日本で唯一の国立女子大学です。国立の女子大学として、貴学が果たすべき役割はどのようなものだとお考えになりますか。
本学は前身である奈良女子高等師範学校時代から今日に至るまで、女子に学部相当の教育を施すという使命を担ってきました。これは今後も継続して取り組んでいくべき、とても重要なミッションです。しかし、これからはそれに加えて、大学院での研究・教育にも大きなウエイトを置いて取り組んでいく必要があります。
「大学全入時代」と言われて久しい昨今、特に国立大学においては、大学院での研究・教育がこれまで以上に重要な意味を持つようになってきました。加えて、本学の場合は女子大でもありますから、高度な専門性を有する女性人材を社会に輩出するという観点からも、大学院の研究力・教育力の強化は必須です。
また、今日、大学進学率に男女間の差はほとんど見られなくなったものの、大学院進学率となると、そこには未だ10%近く差があります。特に理工学系分野において、女性の大学院進学率はまだまだ低いのが現状です。このギャップに鑑みても、「国立女子大」たる本学の大学院が果たすべき役割は多く残っていると思います。
近年、国立大学でも理工学系分野を中心に、学部入試にいわゆる「女子枠」を設けて、女子学生の募集強化を図る動きが活発です。しかし、国立大学における「女子枠」の設置は、学部における女子学生の比率向上だけがその目的ではないと思います。各大学が本質的に見据えているのは「その先」、すなわち、大学院へ進学する女子学生を増やし、将来、大学あるいは企業等で研究に携わるような女性人材を輩出することでしょう。
けれども、それは単に「女子枠」を設けただけでクリアできるほど単純な課題ではありません。進学先の大学および大学院に、女性が安心してキャリアを重ねていける環境が整備されて初めて実現され得るものです。
女性が「男性社会」でキャリアを重ねていくことには、男性が思っている以上に多くのハードルが存在します。独特のプレッシャーもあるでしょうし、各ライフイベントがキャリアに与える影響も男性の比ではありません。そうしたことを、男性多数の組織の方々はどれほど正しく認識できているでしょうか。私はまだまだ心もとないと感じています。
本学は2022年4月に、女子大として初めて工学部を開設しました。初年度から多くの受験生が志願してくれましたが、その中で強く印象に残っているのは、「共学の工学部だったら志願しなかったかもしれない」「女子大の工学部だから入学しました」といった学生たちの声です。
「工学部を設置している大学自体はたくさんあるのだから、その分野を学びたいのであれば共学の大学でも良かろう」と思われる方もいるかもしれません。けれども、女性にしてみれば、決してそう簡単に片づけられる話ではないのです。彼女らの言葉を聞き、特に理工学系分野における女性人材の育成・増加にあたっては、女子大が重要な鍵を握っており、女子大でその人口を増やしていくこともまだ必要であると再認識しました。
――女性人材の不足という社会的課題に対し、制度だけではカバーしきれない部分を女子大が担っていくというのは非常に価値のあることだと思います。ここまでのお話も踏まえて、先生が考える「女子大の意義」について教えてください。
「大学院での研究・教育において、女子大はまだまだ重要な責務を担っている」国立の女子大学であるがゆえに、その意識を強く持っています。
「女子大なんて時代遅れ」などという意見も一部では聞かれますが、先述の通り、大学院にフォーカスすると、時代遅れなどと言っている場合ではありません。女性研究者の少なさ、女性の大学院進学率の低さを、果たして共学の大学だけで是正していけるでしょうか。残念ながらそれが実現できるほど、日本の社会は未だ成熟していないように思います。
性差由来の精神的プレッシャーを感じることなく、またライフイベントを経てもキャリアを継続していける環境は、女性が研究者の道を歩むうえで非常に重要です。その意味で、女子大の大学院が果たすべき役割には、大きなものがあると言えるでしょう。
女性が安心して自身のキャリアを見据え、高度で専門的な研究に没頭できる場として存在すること。本学が「国立女子大」として果たすべき使命は、今、ここにあると認識しています。
――大学院に目を向けると、女子大の役割がより明確に見えてくるという新たな気づきをいただきました。「国立女子大」としての使命を果たすべく、貴学は今後どのようなことに取り組んでいく必要があるとお考えでしょうか。
「国立大学」として研究力をさらに高めるべく、大学院の研究・教育を一層強化し、充実させていくことはもちろん必要です。さらに「女子大」として、女性のキャリアを支援する体制を絶えずアップデートし、分野に関わらず、学生・研究員・教員が安心してキャリアを重ねていける環境を提供し続けていくことも重要であると考えます。


