「2040年の大学・高校」データが示す大学・高校 二つの全国調査から見る展望と課題

2. 学生・生徒の動向と課題

2.1. 基礎学力の低下という共通課題

大学・高校双方にとって、学生・生徒の基礎学力は最大の懸念事項となっている。

(1)大学側の認識:
大学は、将来の大学生全体の「基礎的な学力」が「減少・低下する」と予測する割合が非常に高いが、とくに、私立大学、公立大学、小規模大学において、この傾向を危惧する声が強い(河合塾調査)。

(2)高校側の認識:
高校においても「学力不振の生徒」は大きな課題となっており、大学側と共通の課題認識を持っていることが確認された(河合塾調査)。

2.2. 高校生の進路希望の変化

高校生の大学選びや進路に関する意識にも変化が見られる。

(1)4年制大学への進学希望増:
高校では、4年制大学への進学希望者が増加傾向にある。とくに、私立大学への進学希望者が多い高校でこの傾向が顕著である(河合塾調査)。

(2)地元志向の強まり:
「自宅から通える範囲」で大学を選ぶ傾向が見られる。コロナ以降、生徒の地元志向が出てきている(河合塾調査)。

(3)総合型・学校推薦型選抜の志向:
総合型・学校推薦型選抜を利用して大学に進学したいと考える生徒が増えている(河合塾調査)。

2.3. ギャップ:高まる地元志向と地方の進学機会減少

生徒の意識(高校側)と大学の将来予測の間には、看過できないギャップが存在する。高校の「地元志向」の一方で、大学側は「地方での大学進学の機会は減っていく」と予測している。この需給のミスマッチは、地方の若者の進学機会を奪い、地域社会の活力をさらに削ぐ要因となる可能性がある(河合塾調査)。


3. 大学入学者選抜の構造的転換

3.1. 一般選抜から総合型・推薦型選抜へのシフト

大学入試は、学力試験一辺倒から多面的な評価へと大きく舵を切っている。

(1)現状の募集人員割合:

国立大学: 依然として一般選抜が中心(70.7%)(KEI調査)。
私立大学: 一般選抜と年内入試(総合型・学校推薦型)がほぼ半々の比率。年内入試が主流となり、入試の重点が年明けから年内へ移行している(KEI調査)。

(2)中長期的方向性:
設置者を問わず、将来的には総合型・学校推薦型選抜を「増やす方向」、一般選抜を「減らす方向」で検討している大学が多数派であるが、このシフトは今後さらに加速すると見られる(河合塾調査)。

3.2. 年内入試における重視点

年内入試(学校推薦型選抜+総合型選抜)の設計においては、大学は以下の点を重視している。

(1)学習意欲と基礎学力:
「学習意欲の高い学生」の確保を「とても重視する」大学が74.1%と突出して高い。同時に、「必要な学力習熟度」も9割以上が重視しており、人物評価と基礎学力の担保の両立を目指している(KEI調査)。

(2)ミスマッチの防止:
面接を重視し、「入学してから合わなかった」というミスマッチを防ぐことを意図している。アドミッション・ポリシーとの適合性確認が重要な要素となっている(KEI調査)。

3.3. 入試改革の方向性

多くの大学が、次世代の入試形態を模索し、具体的な改革を検討している。

(1)評価軸の多様化:
「探究活動」の成果や「情報」の成績を評価に取り入れたいという意見も見られる(KEI調査)。

(2)入試方式の拡充:
外部英語試験の利用拡大、女子枠や留学生枠といった多様性確保のための入試制度の導入が検討されている(KEI調査)。

(3)受験生の利便性向上:
併願制度の導入や、試験日程・会場の最適化など、受験生の負担軽減も視野に入れている大学も多く見られる(KEI調査)。

(次ページへ続く)

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