
学生中心で進化する大学教育DX 学びの楽しさを核に
オンライン授業/対面授業の2項対立を超えて
原田:一方で、大学教育の在り方を考えるうえで、もう一つネックになっているのが、まさにオンライン授業です。コロナ禍を経て教員もかなり慣れてきて、ある程度インフラの普及もしたはずであるのに、コロナが明けたら一気に元に戻ってしまってしまいました。日本は欧米に比べて、「対面こそ大学教育の中心」という考えがあるのかもしれません。この辺りはどのようにお考えですか。
竹川:これについては、文科省の単位認定制度そのものを変えなければいけない、というレベルの話になっていると思います。このような問題は、私たちもまさに痛感しているところです。先ほどの米国流の理念、「Student is No.1(学生が一番のクライアント)」を考えると、対面よりもオンラインの教育の方が良いところもあるはずです。
例えば、教員は全て説明してしまうのでなく、学生がそれぞれ自分で学んでいるところを見ていて、本当に補助が必要なことだけ説明すればいい、という学習分野もあるでしょう。日本の大学教員の方々は本当に時間がないように感じるため、自分の研究をしたり、論文を書いたり、といった「本業」に集中できるという意味でも、デジタルをうまく使うというのは、非常に重要だと思います。これによって、教員がラクになるというのではなく、教育の質も高まる、つまり最終的に学生がハッピーになれるのです。
オンライン教育には、同期型と非同期型の2種類があります。同期型というのは、Zoomで行うライブ授業のような形、非同期型というのはオンデマンドのeラーニング教材を作り込むものです。
例えば、私たちの講座では、人工知能に関する基礎コースも、機械学習/深層学習などの実践コースも、インストラクショナル・デザインの理論をきちんと活かした上で、それぞれ1年以上の開発期間をかけて作り込んだ非同期型です。一方で、コロナでこれまで対面でやってきた講義ができなくなってしまったので、単にデリバリーの形を変えてZoomでやります、という、いわば一発型のオンライン授業は、同期型になるわけです。それを全て一緒くたに「オンライン教育」として語られてしまうことに対しては、大きな違和感があります。
ですから、コロナが終息して対面授業に戻ってしまった、というのも、もしかするといままで対面授業でやっていたものを単にZoomでやっただけなので、通常授業に戻ったら対面でやればいいじゃないか、ということなのかもしれません。一方、真面目に授業内容を考えて、オンラインのコンテンツを作られた方もいらっしゃるでしょう。そういった先生方は、学生のことを一番に考えて工夫してやっていたのに、対面の方がいい、と言われるのは何かおかしいじゃないか、と思われるのはよくわかります。
オンラインとオフラインをどのように有効に活用していくか、ということは、文字通りクライアントたる学生に向けた「プロダクトミックス」として、きちんと議論されるべきだと思います。
原田:「カリキュラム・デザイン」のように、オンライン授業の領域もきちんと概念分けしていく必要がありますね。
竹川:そうだと思います。学生には、オンラインの方が、聞き流せばいいから楽勝だ、みたいな見られ方もしますが、必ずしもそうではないと思います。リアルの授業に出ているときには、居眠りしていてもよそ見をしていても「出席」したことに変わりはなく、見つからなければ叱られることもありません。しかし、オンラインでは「ログ」を取ることができます。「どこまできちんと見ているのか」、「このクイズにきちんと答えられたか」、ということもチェックできるのです。したがって、実はオンラインの方が、より正確に一人ひとりの学生の様子を観察していることになるという側面があります。
その意味でも、授業は対面がよい、という考え方に偏るのは、バランスとしておかしいのではないかと思います。
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