
豊島岡女子学園 中学校・高等学校 インタビュー[前編]
■全教員が伴走――学生の自主性をはぐくむ指導体制
--続きまして、先生方の指導体制についてお伺いします。この前の『AcademicDay Final』に参加させていただいた際、文系の先生も理系のテーマで指導することがあるというお話を伺いました。どのような体制で先生方が学生の探究活動をサポートされているのでしょうか。
増田:本校は、探究活動に教員全体で関わります。
高校1年生、高校2年生はゼミを作って探究活動を実施していますので、それぞれの学年の教員がゼミを持っています。理科科の教員は実験室で実験を見たり、実験の計画がちゃんとしているか、問題がないかチェックしたり、生徒からの相談にもたくさん乗らなければならないので、理科科の教員はゼミにつけず、それ以外の教科の教員がゼミを担当しています。つまり、体育の先生が物理のゼミを持っていたり、英語の教員が生物を持っていたりするわけです。基本的には高校1年生に関しては、学年の教員が全員サイエンスのなんらかのゼミを持っている形になっています。 それ以外の学年の先生たちは関与していないのかというと、先ほど100グループぐらい『探究Basic』のグループがあるとお伝えしましたが、そのグループを全教員に複数ずつ割り振っているので、誰かしら、何かしら伴走しているグループを担当するという形で、全教員が探究活動に関わっています。
十九浦:ゼミの先生は、進捗の管理を行うのに加え、生徒が文系の先生に対して「今こういうことをやっています、こういうことに困っています」とテクニカルな内容を分かりやすく言語化することで、生徒自身の理解が深まっていくという利点もあります。もちろん、理科の教員は実験室でテクニカルな相談や指導をしてくれますし、例えば文系の先生でも、人文系のテーマに取り組んでいる学生に対して「もっとこうしてみたら?」とアドバイスできるものに関してはどんどんやってもらっていますが、指導らしい指導というよりは、いわゆる伴走をしてあげるというファシリテートが最も大きな役目です。
増田:最近は、この大学のこの先生に聞いてみたいだとか、この先生のこの研究をやってみたいだとか、生徒たちが自ら希望して学外とつながっていくことがあります。そこで教員が間に入って、やり取りを上手につないだり、学外とのやり取りの窓口になったり、という役割も増えてきました。
十九浦:今は学外との連携が結構多いです。特にJAMSTEC(国⽴研究開発法⼈海洋研究開発機構)との連携が多く、今年度は高1から高3まで70名ぐらいが連携しています。
--生徒が「何々大学の、何々先生がいい」というところまで具体的に希望するというのはすごいですね。生徒はどういった経緯・手段でそのような情報を得ているのでしょうか。
増田:探究活動をするにあたって、文献や先行研究をしっかりと調べるように指導しています。そうすると、先行研究を調べていく中で、「この先行研究を書いた先生のいる大学に行けば、自分がやりたい実験の器具を貸してもらえるかもしれない」というように、器具を貸してもらったり、学生だけではできないデータの分析を研究室にお邪魔して助けてもらったり、ということにつながっています。学校の実験室の範囲に収まらないような研究をしている生徒もいるので。
--先行研究を調べる、という指導はいつ頃行っているのでしょうか。
豊田:中学3年生の時に、探究活動についてのガイダンスを実施しています。その際は、東北大学の先生にお願いして指導していただいています。
十九浦:中学3年生では、他にも集中実習という授業があります。統計的な処理の方法を学んだり、SDGsのテーマに関して協働的に皆で意見を出し合ったり、協働的な作業の練習をしたり、発表の練習も行っています。
増田:高校2年生になると、それぞれが立てた今年度1年間の研究の検証方法を書いて、その検証方法が正しいのか、もっと別の視点はないのか、ということを生徒たちがお互いに検証しあうワークショップをやっています。過去の先輩たちが書いたポスターや論文を生徒たちに見せて、生徒たちに「この検証方法では何が足りなかったのか」ということを考えさせています。
