
河合塾講師が語る!2025年度新課程入試 ―地理編―[前編]
■ 基本的な知識の未定着が課題 -共通テスト『地理総合,地理探究』結果分析②-
――先ほど、『地理総合』の範囲における受験生の出来として、正答率の高かった問題を挙げていただきましたが、反対に正答率が低かったのはどの問題でしょうか。
まず、第1問 問2、図2上の4地点周辺における自然環境と農業の特徴について述べた文として、最も適当なものを選ぶ問題です(問題番号は『地理総合,地理探究』に準ずる。以下同様)。受験地理としては非常に典型的な問題のため、正解してほしかったところですが、正答率は50%を下回りました(マーク率:①正答45.6%、②28.6%、③17.2%、④8.3%)。
誤答として多かったのが②です。西アジアの乾燥帯で、オアシスや灌漑施設を利用して栽培されるのは、アブラヤシではなく、「ナツメヤシ」ですね(なお、アブラヤシは東南アジアを主産地とする、熱帯雨林気候が栽培適地の作物)。

ナツメヤシ
専門外の方からすると、「アブラヤシ」と「ナツメヤシ」なんていやらしいフェイクだと思うかもしれませんが、地理の授業では、「アブラヤシ、ココヤシ、ナツメヤシ。地理で扱うこの3つのヤシのうち、アブラヤシとココヤシの栽培適地は熱帯で、ナツメヤシは乾燥帯が栽培適地です」と、その違いを必ず教えます。つまり、知識がきちんと定着してさえいれば、すぐに誤りを見抜くことができる、定番の正誤判定問題なのです。
しかし、定番の問題でありながら、本問の正答率は50%を下回りました。その理由として一つ考えられるのが、コロナ禍の影響です。2025年度入試を現役で受験した世代は、中学3年間のほとんどをコロナ禍の中で過ごしました。そうしたとき、中学校で学んだ内容がどれほど定着しているかは定かではありません。実際、本問のヤシの栽培適地の違いも、中学校社会科地理分野で学んでいるはずの内容です。このことに鑑みると、本問の正答率の低さは、単なる勉強不足で片づけられるものではなく、ある一定の世代において、中学校社会科地理分野の学習内容が未定着である可能性を示唆するものであったとも考えられます。


