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立命館大学デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科(仮称)インタビュー[後編]

京都に立地する総合大学でデザイン・アートを学ぶ意味

太田:ご存知の通り、立命館大学は総合大学です。総合大学の中でこのような学部をつくることの意義を、しっかりと発信していきたいと思っています。

新学部/研究科が真に目的とするのは、デザイン力・アート力を生かして、未知の課題に挑戦できる、あるいは自身の思い描くビジョンを実現できる人材の育成です。そのために新学部/研究科の学生・院生にはデザインやアートの力を身につけてもらいますが、その力だけで社会や未来の課題を解決できるわけではありません。社会科学、人文科学や自然科学などの既存の学問体系に裏打ちされたディシプリン、知見を組み合わせながら、ビジョンを実現する必要があると考えています。

このコンセプトのもと人材育成をしていこうとすると、学ぶ環境としては、さまざまな分野の学生がいて、さまざまな知識が交ざりあい、協働ができる場所であることが非常に重要です。総合大学にデザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科を新設する意義はそこにあります。そして、それによりどのような化学反応が起こるのか、我々としても、とても楽しみです。 

八重樫:カリキュラム上は可能な形を取ります。しかし、デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科は、「京都でアートに触れて学ぶ」という点を強く押し出していますので、社会人の方も実際に京都に来ていただいたほうが、より学びを楽しみ、深めることができるのではないかと思っています。

太田:新学部/研究科は、衣笠キャンパスでの展開を構想しています。衣笠キャンパスのすぐそばには、金閣寺、等持院などの歴史的建造物をはじめとした「文化都市 京都」が広がっています。その環境を十二分に味わってもらい、「京都」を感じることで、自身のデザイン・アートの感性を磨き育てていくことにも期待をしたいです。 

八重樫:京都は世界的に見ても、伝統的な文化や産業の集積地です。その地で学ぶことができるのを、ただキャッチフレーズとして謳うのではなく、今後はいっそう具体的に、「アートの世界的なキャピタルシティーたる京都を舞台に、デザイン・アートを学ぶことができるのだ」と、明確に打ち出していきたいと思っています。

立命館大学 衣笠キャンパス(写真提供:立命館大学)


立命館大学 八重樫 文(やえがし かざる)教授

プロフィール
学校法人立命館 総合企画室 室長/立命館大学 デザイン・アート学部 デザイン・アート学研究科(仮称)設置委員会 副委員長/立命館大学 経営学部 教授/立命館大学DML(Design Management Lab)チーフ・プロデューサー。
1973年北海道江別市生まれ。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。
デザイン事務所勤務、武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科助手、福山大学人間文化学部人間文化学科メディアコミュニケーションコース専任講師、立命館大学文理総合環境・デザイン・インスティテュート准教授、同経営学部准教授を経て、2014年より同教授。2015、2019年度ミラノ工科大学訪問研究員。
専門はデザイン学、デザインマネジメント論。

 主な著作
『新しいリーダーシップをデザインする』『デザインマネジメント論のビジョン』『デザインマネジメント論(ワードマップ)』(新曜社)、『デザインの次に来るもの』(クロスメディア・パブリッシング)、訳書に『突破するデザイン』(日経BP社)『デザイン・ドリブン・イノベーション』(クロスメディア・パブリッシング)『日々の政治』(BNN)など。


インタビュー:満渕匡彦・原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)
構成・編集 :山口夏奈(KEIアドバンス コンサルタント)

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