立命館大学デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科(仮称)インタビュー[前編]
Q: 先ほど、現在のデザイナー/アーティストには学位取得に対するニーズがあるとおっしゃいました。では、実際に学位を取得したあと、彼ら/彼女らにはどういった形での活躍を期待されていますか。学位を持ったデザイナー/アーティストとして再スタートを切る、組織のリーダー、あるいは教職等の指導的な立場に就く等、想定されている出口戦略についてご教示ください。
八重樫:我々が世に送り出したいのは、「学位を持ったデザイナー」です。学位があることで、現存の領域を超えて活躍できる新しいデザイナー/アーティストを生み出したいと考えています。従来のデザイナーやアーティストができなかったこと、いわゆる学問的な領域や、学位を持たないために制限されていたところにも、より広く挑戦していけるような人材を育成したいです。したがって、我々の考え方は、「今あるフィールドで活躍する方たちに学位をプラスする」ものではありません。
先ほど太田も申し上げたとおり、現在、「学位を持ったデザイナー/アーティスト」は、ほとんどおりません。学位を持たないために、これまでアーティストは、理論的なことや理知的なことには対応できないとみなされてきました。また、デザイナーは、デザインが指すものが社会的・企業的な行為であるほど、自己表現を制限されてきました。加えて、彼ら/彼女らが企業で役職に就くことも、ほとんどありませんでした。
この点において、彼ら/彼女らに修士あるいは博士という学位があれば、学問的な知見を持っていることが証明されるだけでなく、企業組織の中で、より上位の役職に就ける可能性さえ生まれてきます。
従来、「○○アーティスト」という肩書きが、ややもするとレッテルとしてネガティブに働いていたのに対し、「学位を持ったアーティスト」という肩書きを得ることで、よりいっそう自身の活動を社会的に広げていくことができるようになるのです。
デザイナーにおいても、「学位を持ったデザイナー」であることで、従来のような、仕事を請け負い、クライアントの要求に応えるだけの在り方ではなく、自分から仕事を生み出したり、企業の経営に関わる役職に就き、デザインの仕事を広げていくような人になれると期待しています。
例えば、産業デザイナーとしてプロダクトデザインをやっていたような方が、社内で役職に就き、会社全体の意思決定にも参画できる立場になったり、あるいは、社会発信という面で苦労していたデザイナーやアーティストの方が、学位を持ち社会的に認知してもらうことで、より発言力や発信力を持ったりする。具体的な出口戦略としては、こうしたデザイナー/アーティストを増やしていくことをイメージしています。