
【Ⅲ.学生の変化】Part.3「現場の課題と各大学の取り組み」-全国国公私立大学学長アンケート2024-2025 詳細分析-
【目次】
Part1「学生のメンタルヘルスと休退学」
■ 「全国国公私立大学学長アンケート2024-2025」概要
■ 設問Ⅲ-1 メンタルヘルスに問題を抱える学生の増減について
■ 設問Ⅲ-2 休学者の増減について
■ 設問Ⅲ-3 退学者の増減について
■ メンタルヘルスに問題を抱える学生の増減と、休退学者の増減の関係について
Part2「学生からの相談内容」
■ 設問Ⅲ-4 相談件数の多寡について
■ 設問Ⅲ-5 相談件数の増減について
■ 相談件数の増減と、メンタルヘルスに問題を抱える学生・休退学者の増減の関係について①
■ 相談件数の増減と、メンタルヘルスに問題を抱える学生・休退学者の増減の関係について②
■ 設問Ⅲ-6 学生から相談される内容について
Part3「現場の課題と各大学の取り組み」
■ 設問Ⅲ-7 学生のメンタルヘルスの問題に対応するにあたり最も課題となっていること
■ 設問Ⅲ-8 学生のメンタルヘルスをケアする体制の効果
■ 設問Ⅲ-9 体制・施策が効果を発揮できていない理由
■ 設問Ⅲ-10 学生のメンタル不調への対応や不本意な退学の防止に効果をあげている取り組み
■ 「全国国公私立大学学長アンケート2024-2025」概要はこちら
■ 設問Ⅲ-7 学生のメンタルヘルスの問題に対応するにあたり最も課題となっていること
設問Ⅲ-7では、学生のメンタルヘルスの問題に対応するにあたり、「最も課題となっていること」を単一選択式で問うた。集計結果は図47のとおり。「C.相談内容の多様化」と「A.問題を抱える学生の把握」が突出する結果となった。学生に対応する人材の確保や、施設設備にかかる費用よりも、悩みを抱えている学生を「見つけられないこと」、あるいは「相談内容が多岐にわたっていること」に、現場は苦労しているようである。

図49 設問Ⅲ-7(全体)
【設置区分】

図50 設問Ⅲ-7(設置区分)
<国立大学>
A・Cを最大の課題として挙げた大学の割合が比較的高いのは全体版同様であるが、「B.カウンセラーの不足」も27.3%を占めた。国立大学の回答に占める割合が、C(相談内容の多様化)<B(カウンセラーの不足)<A(学生の把握)となっている点も特徴的である。また、「D.カウンセラー等の人件費」の占める割合が全体値を上回るのも、国立大学の特徴である。
<公立大学>
全体版同様、「C.相談内容の多様化」を最大の課題として挙げた大学が最も多く、その割合は全国値を上回った(37.7%)。Cに次いでAの割合が高いのも全体版同様であるが、「B.カウンセラーの不足」を最大の課題として挙げた大学も20%程度存在する(対全体版+4pt)。
<私立大学>
傾向は全体版と同様であるが、「B.カウンセラーの不足」は全体値を下回った(14.1%)。
【本部所在地】
最大の課題として挙がった項目ごとに、各エリアを分類すると次のようになる。
「A.問題を抱える学生の把握」が最も課題であると回答したエリア(計5エリア)
→北海道(56.5%)、中国(45.5%)、埼千神(40.0%)、近畿(36.8%)、九州(36.4%)
「B.カウンセラーの不足」が最も課題であると回答したエリア(計1エリア)
→北関東(38.9%)
「C.相談内容の多様化」が最も課題であると回答したエリア(計6エリア)
→東北(54.2%)、東海(52.5%)、四国(50.0%)、甲信越(41.2%)、東京(32.1%)、北陸(30.8%)
AあるいはCが1・2位、Bが3位となるエリアが多いが、北関東を筆頭に、Bを最大の課題として挙げた大学の割合が20%を超えるエリアも複数存在する。(Bが1位:北関東(38.9%)/Bが2位(*=同率2位):甲信越(29.4%)、北陸*(23.1%)、東北*(20.8%)/Bが3位:九州(21.2%))。なお、東京は全体版とほぼ同様の傾向を示した。

図51 設問Ⅲ-7(本部所在地)
【収容定員】
収容定員10,000人未満の大学では、傾向は全体版と同様であり、「C.相談内容の多様化」と「A.問題を抱える学生の把握」がほぼ同率で1・2位、続く3位に「B.カウンセラーの不足」が入るところがほとんどである。しかし、収容定員10,000人以上の大規模大学では、「B.カウンセラーの不足」を最大の課題として挙げる大学の割合が最も高い結果となった。多くの学生を抱えている大学では、相談者数の実質人数も多いと考えられるため、このような結果となっていると推察される。加えて、大規模大学では、「E.学生相談室等の施設設備費」の負担も、学生のメンタルヘルスの問題に対応するにあたり大きな課題となっているようだ。
なお、北関東で「B.カウンセラーの不足」を最大の課題として挙げた大学の割合が高かったことを先ほど述べたが、本アンケートに回答した大学の中で、北関東に立地する収容定員10,000人以上の大学は1校である。また、同エリアの回答数に占める国立大学の割合もそれほど高いわけではない。よって、北関東で「B.カウンセラーの不足」が最大の課題となっているのは、エリア特性であると考えられる。

図52 設問Ⅲ-7(収容定員)
「その他」に寄せられた回答は以下のとおりである。地方に立地する大学からは「紹介可能な地域医療機関(精神科・心療内科)の件数が限られている」という切実な声が聞こえてきた。また、学生のメンタルヘルスの問題に対応するにあたっては家庭との連携も非常に重要となるが、家族間の不和や家庭環境そのものに問題がある場合もあり、大学側の苦労が思われる。

図53 設問Ⅲ-7(その他の回答)