なぜ女性弁護士は少ないのか? 法学教育の今(早稲田大学)

ロースクール志願者、司法試験合格者 どちらも女性4割の目標を超える

石田:これらが3つの柱ですが、その成果のお話をしましょう。これまで掲げていた目標には二つの指標があって、1つがロースクールの「女性の志願者数」と、もう1つが司法試験の「女性の合格者数」で、それらの女性割合を4割にするというのが目標です。早稲田では、2019~2023年の5年間の計画で、両方ともすでに達成できました。

「志願者数」ではなく「入学者数」の4割を目標にするべきではないのか、という批判もあるとは思いますが、早稲田ではやっていません。入学者数の女性比率を目標に掲げるとなると、そもそもクオータ制はいいのかとか、困難な議論を経る必要が出てきてしまいます。まずは、志願者で女性比率を引き上げることが先決と考えました。でも、早稲田大学ロースクールの入学者における女性の割合は、実は過去4年間、4割を超えているんです。

早稲田出身の女性「合格者」の割合が4割を超えたのは、けっこう画期的なことなのです。司法試験全体のなかで、女性の合格者はまだ3割にも満たないんです。そんな全体状況の中での「女性合格者4割」は胸を張ってよい成果だと思っています。

石田:「202030」(ニーゼロニーゼロ・サンゼロ)という政府が定めた目標がありました。それは、2020年までに、女性があらゆる指導的立場に就く割合を30%にする、という目標で、2005年に始まりました。

内閣府の男女共同参画局が行動計画を作り、5年に1回、数値を公表しています。結果的に、2020年時点では、ほとんどの領域で目標を達成できませんでした。しかし、この目標のおかげで、国の機関である裁判所と検察は、かなり積極的に女性を採用しています。そして、重要なこととして、裁判官も検察官も国家公務員なので、産休や育休が保障されるんですね。これも、弁護士よりも、裁判官や検察官の女性比率が高くなっている要因かと思います。

一方、弁護士というのは、個人事業主が多いので、産休や育休が制度的に保障されているとは言い難い状況があります。また、国が掲げる数値目標も効きにくいので、このような違いが出ているのだと思います。もちろん、人数で言うと弁護士の方が圧倒的に多いのですが、女性割合としては、法曹三者の中で最も少ないです。

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