「育児かキャリアか」の2択ではない 「どちらも頑張る」も可能なのがあるべき姿

司法アクセスの不平等は、ジェンダー格差に悪影響

石田:実証的に、男性も女性も、弁護士を依頼するならば、どちらかというと同性の弁護士を好むということがわかっています。しかし、弁護士全体で女性は2割しかいない。このことが何を意味するのか。男性が男性弁護士にアクセスするのと同じような簡単さでは、女性は女性弁護士にアクセスできないのです。結果的に女性の司法アクセスが妨げられているんです。

重要なのは、この問題意識ですね。男性が男性弁護士にアクセスするのは容易なのに、女性は女性弁護士にアクセスできない。このことによって埋もれてしまっている法的な問題は、たくさんあるはずなんです。司法アクセスの不平等は、この国のジェンダー格差に悪影響を与えています。

もうひとつ、実証的な研究についてもお話しさせてください。これは、「民事訴訟利用者調査」といって、民事訴訟をしたことのある「司法の利用者」の調査なのですが、データとしてとてもショッキングな結果が出ているんです。

調査では、司法への満足度等、いろいろな点を聞いています。たとえば、依頼した弁護士への満足度とか、事件を担当した裁判官への満足度とか。これらの質問への答えには、ジェンダー差はみられなかったんです。また、「あなたの裁判結果についてどう思いますか」という質問についてもジェンダー差はなかったんです。

けれども、最後の質問で、この国の司法や法制度についての評価を聞いています。例えば、「日本の民事裁判制度は国民にとって利用しやすい制度だと思いますか」「日本の法律は公正なものだと思いますか」とか。これらの制度全体に対する質問についてだけ、男女で大きなジェンダー差がクッキリと出ているんですね。要は、女性の方が司法制度や法制度に対して否定的なんです。

「同じ問題が起こったときに裁判制度をもう一回使いますか」という質問にも、女性の方が否定的な回答が多い。これは、社会的に大問題だと思います。女性の司法への信頼というテーマは、近年の私の重要な研究テーマの一つです。

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