
文科省、大学の「新たな評価」制度案を提示 教育の質を最高「3つ星」とする4段階で評価
文部科学省は17日、「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第9回)」を開催。その中で、大学の「新たな評価」の在り方として、教育の「質の保証」と「質の向上」に特化し、4段階で学部等を評価する案が提示された。
評語案は、「要改善」および1つ星~3つ星までの4段階で、学部等で実施されている教育が、高等教育機関として法令等で求められている水準に達していない場合には「要改善」、その水準に達している場合には「1つ星」となる。さらに、「1つ星」評価であることを前提に、学生の成長につながる優れた取り組みが実施され、その取り組みに高い教育成果が期待される場合には「2つ星」、その取り組みが高い教育成果をあげている場合には最高評価の「3つ星」が与えられる。評語案について文科省は、「高校生や企業等にとってわかりやすい表現を設定したい」と述べる。
文科省は、少子化が急速に進行している我が国において、学生個々の能力を最大限高めるためには高等教育機関における「教育の質」の向上が不可欠であるとし、偏差値による評価から脱却して「教育の質」で大学を評価するとともに、その評価結果を社会に分かりやすく公表する仕組みの構築を目指している。
現在検討が行われている大学の「新たな評価」のポイントは、「教育の質」を評価することに特化している点である。各大学の学部等における教育の「質保証の徹底」と「質向上の促進」が目指されている。
「質保証」の視点による評価は星の有無に該当する。自己点検評価書および根拠資料をもとに、各学部で実践されている教育が法令等で求められる水準に達しているかを厳格に判定し、評価項目をすべて満たす場合にのみ「1つ星」が与えられる。1つでも評価項目を満たさない場合は、「要改善」と判定される。また、法令等で求められる水準を評価の基準とすることから、すべての評価機関が同一の基準に基づいて評価を実施する方針だ。なお、学位の分野により、法令等で求められる水準が異なる場合は、基準等の追加等を可能とするが、すべての評価機関において同一の基準となるよう調整の必要があるとしている。
「質向上」の視点による評価は、学生の成長につながる取り組みと、その教育成果を総合的に勘案して判定され、教育成果(アウトカム)の程度により「2つ星」あるいは「3つ星」が与えられる。具体的には、実施されている取り組みと教育成果の関連性を根拠となるデータをもとに示すことができるかがポイントとなる。また、「質向上」の視点による評価は、日本の各高等教育機関が掲げるディプロマ・ポリシーや養成する人物像の多様性を考慮し、それらを適切に評価できるよう、教育成果の例および段階の判定基準等について、評価機関間で目線合わせ(調整)を進めていく必要性が述べられている。
なお、評価の対象については、養成すべき人物像やディプロマ・ポリシーが掲げられている単位としての「学位プログラム」ごとに評価が行われるべきであるとする一方で、日本の高等教育機関においては学部が「教育研究上の基本的組織」として設置されていること、設置の際にも学部・学科単位で認可を得ていること等の現状を踏まえ、「新たな評価」制度において、まずは学部を原則として評価を行うとしている。

出典:文部科学省教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第9回) 配布資料【資料1-1】「新たな評価」制度の在り方について(案)
また、今回のワーキンググループでは、「新たな評価」について、評価の主体や評価結果の公表方法に関する具体的な案が初めて提示された。
評価の主体については、大学の内部質保証が図られているかという大学全体の評価とともに、基本的にすべての学部の段階別評価を総合的に担う「総合評価機関(仮称)」と、医学・歯学など、特定の学位の分野を専門的に評価する「特定分野評価機関(仮称)」の新設が提案された。評価機関では、各学部等で授与する学位の分野をもとに、文科省の「学位の種類及び分野の変更等に関する基準」に定める学位の分野を踏まえた評価員を集め、ピア・レビューを実施するという。
また、特定分野評価機関(仮称)の評価を受審した学部等については、その評価結果をもって総合評価機関(仮称)の当該学部の評価に代えることを可能とする方針だ。従来課題とされてきた分野別認証評価と機関別認証評価の双方受審による重複感・負担感の解消を図る。
加えて、評価結果の公表については、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構のデータプラットフォームにおける一元的な公表が想定されているという。文科省は、高校生や企業等が活用しやすいよう、評価のポイントを分かりやすく示したいと述べる。
出席していた議員からは、段階別評価について、2つ星評価における「(教育成果が)期待される」の程度の判断基準や、教育成果のエビデンスを示す難しさについて指摘があった。このほか、学際系の学部でA分野では2つ星だが、B分野では3つ星といったように、分野によって評価が分かれた際の最終的な判定に対する懸念や、既存の枠組みを超えたグッドプラクティスも評価できる仕組みの構築を求める意見も挙がっていた。さらに、「評価とは大学を育てるためのメタ認知を促すシステムとして機能することが重要である」との意見や、基準を満たすことだけに終始し、実質的な質向上が図られないという事態とならぬよう、ある程度基準に柔軟性を持たせ、この「新たな評価」が学生・大学を支援する制度となることを期待するとの声も聞かれた。

出典:文部科学省教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第9回) 配布資料【資料1-1】「新たな評価」制度の在り方について(案)
<参考>
・文部科学省|教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第9回) 配布資料
執筆:山口夏奈(KEI大学経営総研 研究員)


