KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『教育哲学講義 子ども性への回帰と対話的教育』河野 哲也 著 (勁草書房)

教育哲学・道徳教育についての講義ノートを基にまとめた教育哲学テキスト。人間を子どもへと成長させる過程として教育を理解する。

■本の内容

従来教育は、子どもを大人へと成長させる過程として理解されてきたが、本書では、人間を子どもへと成長させる、子ども性へ回帰させる過程として教育を理解する。子ども性の特徴とは「遊戯」「始原への回帰」「多型的反復としてのリズム」「変身」であり、特に重要な、対話・時間・参加という概念をキーワードに、教育哲学を論じる。


【著者】

河野 哲也(こうの てつや) 立教大学   文学研究科 教育学専攻 教授


【目次】

序論 児童期への回帰としての教育
 本書はなぜ書かれるのか
 「思い出しなさい。 あなたがかつて若かったことを」
 「初心忘るべからず」
 哲学と、再び子どもになること
 本書の展開

第Ⅰ部 子ども性と教育

第一章 教育とコミュニケーション
 人間のコミュニケーション
 教育というコミュニケーション
 生態学的情報理論
 教育と情報、コミュニケーション

第二章 子どもとはいかなる存在か
 子どもの特性
 プラトン的子ども観
 子どもの二つの神的特徴
 子どもにおける可能性と潜在性
 子どもを生き直すための教育

第三章 遊戯と存在
 遊びの定義
 不確実性の楽しみ
 パイディア(Paideia)とルードゥス(Ludus)
 二重性と大人の遊び、子どもの遊び
 デュシャンと子どもの世界
 ゲームを作ること、ゲームをなすこと
 ゲーム・チェンジャーとしての子ども
 変身する身体

第四章 終わりなき生――多型的反復のリズムとしての子どもの時間
 カイロスとクロノス
 ヘルメスとヘスティア
 アイオーンの時間――終わりなき世のめでたさよ
 待つこと――潜在性、旅、歓待
 待つことと教育

第五章 真理と対話
 真理と問い
 問いとは何か、私たちは何を問うのか
 再び、「なぜ」と「何」という問いについて――宇宙的再現
 私たちはどうすれば無知であり続けられるか
 リズムに現れるアイオーン

第Ⅱ部 子ども性と教育の社会

第六章 科学、技術、民主主義
 知識を所有すること
 テクノロジーと現代社会
 テクノロジーの民主化
 現代の技術論によるテクノロジー批判
 テクノロジーと社会の関係
 科学と民主主義
 民主主義と真理の共同体
 科学と哲学、児童期への回帰

第七章 教育の平等とは何か
 平等と健康
 障害の社会モデル
 機会均等と平等の基準
 平等概念の放棄
 ケイパビリティ・アプローチからインクルージョンへ
 対話とインクルージョン、子どもの意見表明権

第八章 教育的タクト――対話と沈黙の時間
 カイロス的瞬間としての対話
 タクト
 教育的タクト
 余白とリズム
 身体的リズムとしての対話
 対話における沈黙
 場面緘黙とリズム
 沈黙と幽霊
 タクトは独自なものを成長させる

第九章 あるべき道徳教育
 子ども性と対話
 手続きによる道徳教育
 対話による問題解決と平和教育
 テスト・オプションによる道徳教育
 道徳的変容の判断基準

あとがき
文  献
事項索引
人名索引


定価 2,750円(税込)
刊行日 2025/2月

リンク:教育哲学 勁草書房

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