KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『専門書を読む 教員と学生でつくる10講座』吉田文・濱中淳子・渡邉浩一 編著(ミネルヴァ書房刊)

文章を読んで理解すること(させること)の難しさに改めて直面した学生の苦悩、教員の呻吟…。その結末は。

■本の内容

大学生に専門書を読ませるには、どうしたらいいか。専門書どころか小説やマンガすらも読まないかれらにいかに本を読ませ、内容を理解させるか。ペアで読む、輪読、要約、書評執筆など、知恵を絞った教員10人の格闘の記録。
[ここがポイント]
◎ 学生に専門書を読ませるための仕掛けや工夫
◎ ファカルティ・デベロップメント(FD)に活用できるプロジェクト過程の詳細記録
◎ 参考になるブックリストの充実


■編著者

吉田 文(よしだ あや)
早稲田大学教育・総合科学学術院 教育学部教授。研究分野は教育社会学。博士(東京大学)。1989年放送教育開発センター研究開発部助教授に就任。1995年カリフォルニア大学バークレイ校高等教育研究センター客員研究員。1997年メディア教育開発センター研究開発部助教授。2001年同教授。2002年メディア教育開発センター教授。2008年早稲田大学教育・総合科学学術院教授。

濱中 淳子(はまなか じゅんこ)
早稲田大学教育・総合科学学術院 教育学部教授。研究分野は教育社会学。2006年株式会社リクルート ワークス研究所研究員。2007年大学入試センター研究開発部助教。2012年同准教授。2016年同教授。2017年東京大学高大接続研究開発センター教授。2019年早稲田大学教育・総合科学学術院 教育学部教授。

渡邉 浩一(わたなべ こういち)
福井県立大学学術教養センター准教授。専門分野は哲学・一般教育。博士(人間・環境学)。2016年大阪経済法科大学教養部特別専任准教授に就任。2019年大阪経済法科大学教養部准教授(任期付き)。2021年福井県立大学学術教養センター准教授。


【目次】

はしがき

序論 大学生と学術専門書(吉田 文)
1 要請される読書
2 読書が作った身分文化
3 失われた読書文化
4 専門書への挑戦

 第Ⅰ部 古典に挑む

第1講 『イリアス』を読もう――講義形式の授業での試み(堀川 宏)
1 大学の授業で『イリアス』を読むこと
2 当該年度の授業デザイン
3 学生たちの学習状況
4 毎回の授業レポートから
5 学期末レポートから
6 おわりに――座談会をやってみて

第2講 デューイ『民主主義と教育』上巻を読んだ――哲学書から現代の教育を考える(吉田 文)
1 2021年新学期3年ゼミ
2 実験の始まり――ジョン・デューイの輪読経過
3 学生は何を学んだのか
4 付記(2023年3月)

第3講 フランケンシュタインとマルサス――一般教育の2つのゼミでの読書(渡邉 浩一)
1 学生と一緒に読むこと
2 「身にする読書」――初年次ゼミで新書を読む
3 哲学書にチャレンジ――「学術ゼミ」での取り組み

 第Ⅱ部 理論を摑む

第4講 法学部新入生と『なぜ歴史を学ぶのか』を読む――読解力向上の目標設定(八谷 舞)
1 はじめに
2 要約をしてみよう
3 批判できるようになろう
4 ディスカッション・トピックを立ててみよう
5 最終課題
6 おわりに――まとめと展望

第5講 『独裁者のためのハンドブック』『多数決を疑う』をゼミで読んでみた――質の高いディスカッションを目指して(藤田 泰昌)
 1 なぜ学術的文献を講読するゼミを実施するのか
 2 どのようなゼミで学術的文献を読んだのか
 3 ゼミの経過
 4 何が変わったか
 5 おわりに

第6講 自ら考える読書を目指して――『「働くこと」を思考する』を題材に(畔津 憲司)
1 読書推奨に対する一抹の不安
2 読書をめぐっての大学生との対話
3 学びとしての読書とは
4 授業の概要と指定書籍
5 授業の進め方と学生の準備
6 授業の実践と経過
7 おわりに

第7講 輪読において討論を活発化させる仕掛けの探求――『ソロモン 消費者行動論』を読む(齋藤 朗宏)
1 はじめに
2 カリキュラム
3 ゼミと取り組みの概要
4 取り組みの結果
5 全体のまとめ

 第Ⅲ部 社会に臨む

第8講 対話を通して思考の解像度を上げる ――『はじめて学ぶ生命倫理』のグループ講読(標葉 靖子)
1 はじめに
2 授業の設計
3 議論の記録――学生はグループ講読にどう取り組んだのか
4 専門書を読むことの意義――学生は自分たちの取り組みをどう振り返ったのか
5 おわりに

第9講 『女性の生きづらさとジェンダー』を読み、対話する――埋もれた声に気付くための方法(荘島 幸子)
1 はじめに
2 授業情報
3 輪読の計画および学生に対するオリエンテーション
4 授業の過程
5 教員の学生集団に対する主観的評価

第10講 書評執筆は専門書理解を促進するか――『ルポ 教育困難校』『「つながり格差」が学力格差を生む』を読み込む(濱中 淳子)
1 授業の概要――なぜ、書評なのか
2 学生たちはどう取り組んだのか
3 考察

ブックガイド――「大学生の読書」を考える18冊(渡邉 浩一)
1 「最近の学生は本を読まない」という言説の歴史――新旧読書調査
2 大学生協の問題提起――「読書指導の時間」
3 「何をいかに読むべきか」――グレートブックス
4 何をいかに読んできたか――読書史
5 大学内外でのさまざまな試み――ビブリオバトル・読書会・ライティング

《鼎談》読むことの楽しさを伝えられたか――講読プロジェクトを終えて(吉田 文×濱中 淳子×渡邉 浩一)

あとがきにかえて  

書名索引  


定価 3,300円(税込)
刊行日 2025年4月30日

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