TOPインタビュー

国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

大和大学 田野瀬 良太郎総長インタビュー[後編]

【学生、保護者の満足度を最大限に高める】

2024年3月、本学の学生を対象に、講義の内容や質、施設設備、学生サービスや大学運営に関することなど、多岐にわたるアンケートを実施したところ、実に多様な要望、要請、注文、不満が寄せられました。それらを各学部、各部署に全てフィードバックし、「どう改善していくか」「学生のニーズに応えるにはどうするべきか」を、1年間かけて議論してきました。

「まだこれでは不十分だ」「これを改善するにはもう少し予算が必要だ」そうしたキャッチボールを何度も行ない、改革を続けて一年が経った今、再び3月にアンケートを実施し、どの程度その注文や不満が減っているのか、改革の成果は正しく学生たちに還元されているのかを確かめたいと考えています。さらに、この取り組みを一年限りのもので終わらせてしまうのではなく、今後も調査を継続し、本学の課題を徹底的に解消していく所存です。

特に看過できないのは授業に対する注文、不満です。授業は教育機関の命です。そのため、授業への不満は絶対に解消しなければなりません。

そこで、授業に関するアンケートは、年4回実施することにしました。各授業につき前期に2回、後期に2回です。

アンケートでは、それぞれの授業に対して多様な意見が寄せられました。これを全教員にフィードバックすることはもちろん、学生からの様々な注文、不満に対する改善の方向性を各教員に示していただき、学部長がそれを確認し、必要に応じて教員と議論していただくようにしています。これを半期ごとに2回、年4回実施し、年度末に改めて、学生たちが満足できる授業になったかどうかを調査するのです。徹底的に授業に対する不満を解消すべく改善を続け、「学生や保護者の満足度を最大限に高め」ていきます。

しかしながら、教員の評価については、我々が冷静に判断しなければならない部分があるのも確かです。学生は、一生懸命に指導してくださる先生を評価する一方で、厳しくない、いわゆる甘いタイプの先生に良い評価を与えたりもしますから。

大学は教育機関ですからね。一般企業の場合は、お客様の声をできるだけ反映させて、業務や商品を改善していく必要がありますが、大学の場合は必ずしもそうとは限りません。

ただし、学生の意見が100%正しいとは限らないと言いつつも、私から見ると、学生の教員評価は8~9割正しいです。「目の前の学生たちをしっかりと教育していこう」という熱意が教員に有るか否かは、しっかりと見抜かれていますね。


【常に動く、時代に変化する】

2つ目は「常に動く、時代に変化する」。毎年何か新しいことに取り組んでいこうと考え、2023年度には情報学部を、2024年度には政治経済学部にグローバルビジネス学科を開設しました。そしてこの2025年度は、情報学部に「情報科学専攻(理工学部から移設)」「データサイエンス専攻」「情報経済経営専攻」を新設し、理工学部には、新たに「生物生命科学専攻」を設置しました。さらに、理系人材の育成という文部科学省の要請に応えるべく、理工学部および情報学部の入学定員を増やしています。

そして来たる2026年度は、入試を大きく変更します。

我々が目指しているのは、「東の早慶、西の大和」です。その実現のためには、入試を高学力層の受験生が納得するレベルに変えていく必要があります。具体的には、試験科目を増やし、難易度も上げるということです。段階的に「上」を目指し、数年後にはいよいよ早慶レベルへ至るためのさらなる施策を練ろうと考えています。

しかしながら、2025~2026年度の2年間で大きく入試を変えることになるため、現場は戦々恐々としています。これまで本学を目指し受験してくれていた層が、試験が難しくなることを懸念し、志願してくれなくなっては大変だからです。

けれども、「東の早慶、西の大和」を目指す以上、ここは避けては通れぬ関門です。「早いか遅いかだけの違い、それならば今進もう」そう考えて、現在準備を進めています。


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