
東京女子大学 森本 あんり学長インタビュー[後編]
■「その時はもう女子大学なんかやめたらいい」 森本先生が語る女子大の意義
--昨今、共学化を選択する女子大学が増えていますが、この趨勢を森本先生はどのようにご覧になっていますか。また、森本先生が考える「女子大であることの意義」について、ご意見をお聞かせください。
昨今、いくつかの女子大が共学に切り替えていることは事実ですが、全体として見たときに、今後女子大の共学化が進んでいく、そのようなことはありません。総じて女子大は、自らが女子大であることに誇りを持っています。
例えば、かつてアメリカには約200もの女子大がありました。今は40くらいです。数だけで見るとものすごく減ってしまいました。しかし、その残った40の女子大の志願者は今、むしろ増加傾向にあります。それはなぜか。アメリカでも女子大は、やはり必要不可欠だからです。
ヒラリー・クリントン氏が大統領選で敗れた際に、「ガラスの天井」という言葉も聞かれましたが、世界のジェンダーギャップ指数のランキングを見ても、アメリカは40位台で、依然として男女間の格差があることが分かります。つまりアメリカにおいても、社会でリーダーシップを発揮できる自立した女性をまだまだ輩出しなければならないのです。そのためにも、女子が「男子から見た女子」としての立ち振る舞いを求められることなく、自らリーダーシップを存分に発揮でき、安心してのびのびと大学生活を送ることができる女子大というスペースの存在は、とても重要だと思います。
ご存じでしょうか。実は女子大が盛んなのは、世界中でアメリカと韓国と日本くらいなのですよ。特にアメリカと韓国の女子大はプライドが高く、またいずれもエリート校です。例えばアメリカですと、「アイビー・リーグ(IVY League:アメリカ合衆国の北東部の伝統ある8つの名門私立大学の総称)の女性版」というのが、今の女子大の位置付けとなっています。東京女子大学もそのようになりたい。それはエリート校になりたいという意味ではなく、やはり女子大で学んで社会に出ることの意義が、「残念ながら」、今はまだ非常に大きいからです。
世界的に見ても依然として男女間の格差は大きく、OECDの研究でも、完全な男女平等が成立するには、あと136年かかると言われています。そんなに待っていられるわけがありません。
昨年、マウント・ホリヨーク大学(アメリカ最古の女子大学。1837年創立)を訪れた際、その壁に、「equal opportunityじゃない、every opportunityだ」と書かれているのを目にしました。男女平等と言うけれども、女性が半分だけopportunityをもらえるのが共学だとすると、女性がその全部をもらえるのが女子大です。今はそうしなければ、いつまでも男女平等は達成できません。
これに関連して、みなさんは女子大が共学化するデメリットは何だと思いますか?簡単です。女子学生の数が半分になってしまうことです。
だってそうでしょう。女性100人のクラスだったところを、男性50人女性50人にしてしまったら、以前と比べてクラスにいる女性の数が半分になってしまうのですよ。それでは男女平等を達成するのに2倍の時間がかかってしまいます。今はどんどん自立した女性を社会に出すべきなので、女性が100人いてもらわなければなりません。だから、私は女子大の共学化には断固反対です。
やがて、国会議員が男女同数になったら、その時はもう女子大学なんかやめたらいい。それが現実となるまでは、絶対に東女が女子大である必要があります。
女子大なんか要らなくなるような社会が早く来てもらいたい。心からそう思います。そのためにも、「残念ながら」、今はまだ女子大が絶対に必要なのです。