
上智大学 杉村 美紀学長インタビュー[後編]
■ 大学こそ社会の中で弱い立場にある人々の支援を
--先生が課題意識を持たれている、いわゆる社会の中で弱い立場にある人々への支援では、どういったことをされているのでしょうか。
杉村:例えば、東ティモールという、最近ようやくASEANの原則加盟が認められた国があります(インドネシアの占領から2002年に独立)。そこに、イエズス会が6年制の中等学校と、教員養成大学をつくっています。上智大学は奨学金を出して、東ティモールからの学生を受け入れています。私も実際に東ティモールの学校を訪問したことがありますが、上智大学も、今から110年前にイエズス会のミッションによりこのようにして設立されたことを実感しました。
また、ミクロネシアでも同じように支援をしています。ミクロネシアには大学がないので、奨学金のファンドを作って、上智大学でも学生を受け入れるようになりました。
その他、イエズス会が運営する世界の大学には、JWL(Jesuit Worldwide Learning)という支援プロジェクトがあります。本部がジュネーブにあり難民キャンプをはじめ、高等教育をうける機会が無い人々にオンラインにより教育プログラムを配信するものです。素晴らしいミッションだと思いませんか。
相手側のWi-Fi環境やパソコンの有無など課題もありますが、インターネットにつながりさえすれば、学ぶ機会を得ることができます。
JWLのサイト(https://www.jwl.org/ )を見ていただくと、卒業生、修了生が嬉しそうにしている写真が載っています。この実践は、私たちが想像するほど生易しいことではありませんが、それでも、こうしたプログラムがきっかけとなって一歩を踏み出すことができたらと思います。上智大学は今後こうした活動にも関心を寄せていきたいと思います。これこそ「他者に寄り添う教育」(For Others)と言えるのではないでしょうか。
■ 再説:真の国際化とは
--国際ランキングのフィールドで、競争をして他大学と関わるというよりも、ネットワークでつながって、皆でやっていこうという雰囲気が感じられて、私は非常に気持ちが温かくなりますね。
杉村:そう思っていただけたら良いのですが。もちろん、大学のランキングも意味がないわけではないとは思います。しかし、そもそも、仮に大学のランキングは高くなくとも、生き生きと学んだり働いたりできる大学であることが重要であると思っています。また「上智大学だったらこういうことを学べるから行ってみたい」と思っていただけるようなプログラムを重視したいと考えています。大事なのは、教育の内容と質を向上させることです。
教育の場である大学でもう一つ重要なことは、いろいろな学生さんが集まり、その誰にとっても居場所があるということです。多様性を重視するとともに、包摂性ということがとても大切になります。大学の会議等でも、今日では、日本語と英語の両方で対応できるようにするという努力が続けられています。
--多様性の追求とは、手間が増えることでもあるので、大変ではありますね。
杉村:おっしゃる通りです。それは、決して楽な道とはいえませんが、多様な方をたくさん受け入れ、その環境で学んだことはとても大きな意味を持つものと言えます。
