
上智大学 杉村 美紀学長インタビュー[前編]
■ 大学の国際化を支えるプログラム
--たとえば、どのようなプログラムがあったのでしょうか。
杉村:数ある上智大学のプログラムのなかでも、特に思い出深いプログラムがあります。それは、2008年に始まり、今も続いている「グローバル・リーダーシップ・プログラム」という取り組みです。
このプログラムには、上智大学の他、韓国の西江大学、台湾の輔仁大学、フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学、そしてインドネシアのサナタ・ダルマ大学と、イエズス会を中心とする東アジアの5か国のカトリック大学の学生が参加しています。学生は、その年のテーマにそって、それぞれの大学で事前に勉強し、夏休みの一定期間、その年のホスト大学に集まってフィールドワークを行いながら交流し、社会文化的背景が異なる人々のあいだでの国際理解を学んだり、多角的な視野から物事を考えたりする態度やコンピテンシーを身につけます。
特に印象深いのは、このプログラムが、上智の法学部の卒業生でもある職員の発案で始まったということです。その職員は、「自分は法学部の卒業生だけれど、学生時代にやってみたかった国際教育のプログラムがある。それを一緒にやりませんか」と声をかけてくれたのです。卒業生が、日々の業務を行いながら、自分の夢を実現しようと行動したこと、そしてそれを共に実現しようと大学がサポートしてくれたことはとても素晴らしいことであると思いました。同時に上智大学はそうしたミッションを支える大学であることを実感しました。
実際に、このプログラムを通じ、国と人とがつながり、学生が生き生きと学ぶプログラムが実現しました。「上智ならでは」のプログラムであると思います。
その後も上智大学ではいろいろな国際化の取り組みが重ねられてきました。
--上智大学というともともと国際的というイメージではあったのですが、1990年頃には市ヶ谷キャンパスに「比較文化学部」(のち国際教養学部に改組)がありましたので、上智大学といえば「帰国子女」というイメージがありました。その時代は、私立文系の競争率が非常に高い時代で、上智大学もすごく大人気で、憧れの大学でした。ただ、今までのお話をお聞きすると、2000年代以降ぐらいにいろいろなプログラムや取り組みを始められてから、新たなグローバル化、国際化が上智大学でも始まったという感じがします。
杉村:上智大学は、それまでの実績に加え、2000年くらいから新たな挑戦に次のステップを進めたといえると思います。先程述べたとおりグローバル・リーダーシップ・プログラムを開始し、その後、文部科学省の補助事業であるグローバル30(文部科学省「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(グローバル30)」|上智大学 ウェブピロティ)、スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)(文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」|上智大学 ウェブピロティ )、世界展開力強化事業(文部科学省「大学の世界展開力強化事業」|上智大学 ウェブピロティ )などに採択され、グローバル化を一歩一歩積み重ねてきました。
お話にあった比較文化学部は、1949年に設置された国際部を前身とするすべての授業を英語で行う学部で、2006年に市谷キャンパスから四谷キャンパスに移転して国際教養学部として改組されました。現在、国際教養学部だけでも50か国を超える国の学生が学んでいますが、小さなワンキャンパスに皆が集まって交流することにより、さらに多様な環境が生まれています。
また、2014年にスーパーグローバル大学創成支援事業に採択され、その取り組みを進めた結果、留学生数は約2倍に増加し、学生の国籍も多様になりました。今では90カ国以上の学生が四ツ谷キャンパスで学んでいます。先生方も多国籍で、20数か国から集まっており、外国籍の先生は約6人に1人となっています。
--グローバル化の取り組みとしては、他にどんなものがありますか?
杉村:国際教養学部に加え、大学院の英語で行うプログラムとしては、地球環境学研究科があります。2011年10月には英語だけで単位取得と修論執筆が可能な国際環境コースも併設されました。 またグローバルスタディーズ研究科や総合人間科学研究科の教育学専攻にも英語で修士と博士の学位を取ることができるコースがあります。さらに、理工学部には2012年9月に英語だけで自然科学を学ぶ「グリーンサイエンスコース/グリーンエンジニアリングコース」というコースが開設され、学部から大学院までプログラムを展開しています。このコースは2027年からは「デジタルグリーンテクノロジー学科」(https://www.sophia.ac.jp/jpn/article/news/release/20250221_dgtech/)という英語で学ぶコースとしてさらに拡充されます。
さらに、スーパーグローバル大学創成支援事業の構想に基づき 、2020年にはSPSF(Sophia Program for Sustainable Futures)という、英語による学位取得プログラムを新設しました。このプログラムは、持続可能な未来を考え、学ぶ人文科学・社会科学系のプログラムで、教育学科、社会学科、経済学科、経営学科、総合グローバル学科、新聞学科の計6学科が連携しています。