
清泉女子大学 山本達也学長インタビュー
--ミネルバ大学の話に戻りますが、同大学は(研究に加えて)“教育人材”として教員を採用していると聞きました。それに近い理想的な環境下での教育を実現できているのは、この規模だからこそなのでしょうね。
山本:それはあると思います。そういった意味において、私たちは研究だけに特化した大学ではありません。ただ、どの教員も先端的な研究内容をどう教育に入れていくのかということを、常に意識しています。このように、研究と教育への還元を同時に考えられるコミュニティであるという点は、アドバンテージでしょう。
--今回の改組で、新しく先生を採用されたのですか?
山本:地球市民学部のソーシャルデザイン領域では、メディア系、AI・プログラミング系の教員を新たに採用し、さらに学際的・実践的な学びができるようになりました。ひとりは、NHKに長く務め、大学の教員歴も7年ほどある方で、もうひとりは、Meta社でインスタグラムの開発を、多国籍チームのリーダーとして率いていた方なのですが、教育に携わっていた経験もあります。「女性とデジタルの世界」という視点での問題意識を強く持たれている方です。
--女性の活躍ということにも関係しますが、貴学では多様性という観点から、何か取り組みはされていますか?
山本:「多様性」は、本学における課題の一つです。似たようなバックグラウンドを持つ人同士で集まるのではなく、さまざまな文化や価値観を抱えた学生同士でディスカッションを重ねて、理解を深め合ってほしいと思っています。
一方で、障がいを抱えた学生への対応は進んでいます。例えば、聴覚障がいのある学生に対しては、面接の際に画面を介してテキストで質疑応答をすることもあります。今年はろう学校出身の学生が入学したのですが、履修登録の説明の際に手話通訳士として来校されたろう学校時代の先生が、「彼女のこんな表情は、見たことがない」というほど生き生きしていたそうなんです。
テクノロジーにも、すごく助けられていますね。最近、アプリなどによる文字起こしの性能が上がっているじゃないですか。たとえば3年前では、授業や会話で日常的に使えるほどのレベルには達していなかったと思います。今ではもう学生たちはみな同じアプリを入れて、楽しそうに会話している姿を目にします。
--模範的なテクノロジーの使い方ですね。
山本:そうですね。だから、もうテクノロジーの手を借りられる場面では、どんどん活用していったらいいと思います。