武蔵野美術大学 長澤忠徳 理事長インタビュー

新学部でも育まれる「ムサビらしさ」——実践と共創の教育デザイン

長澤理事長:最も大切にしたのは「ムサビらしさ」を身体ごと体験させることです。この造形構想学部クリエイティブイノベーション学科は、1・2年次は、実技教育を手厚く行う鷹の台のメインキャンパスで学び、3年次から市ヶ谷キャンパスで学ぶ設計にしました。入学時に実技試験がない学生たちに、まず「つくる」とはどういうことかを身体で体験してもらい、そして何より鷹の台の空気に触れて「ムサビらしさ」に感染してほしかった。私はこれを「ムサビ菌」と呼んでいます。一度感染するとワクチンがない、伝染性のウイルスのようなものです(笑)。

「ムサビ菌」を醸成する鷹の台キャンパス

長澤理事長:その通りです。市ヶ谷での学びの舞台は”実社会”。そして、とりわけ特徴的なのが、長期の地域滞在型プロジェクトです。他大学で見られるような、1週間程度のプログラムとは全く違います。本学では4週間から6週間、学生をそれぞれの地域や企業に送り込んでしまうんです。このために、日本各地の自治体と連携協定を結びました。そして、この異例のカリキュラムを実現するため、前期・後期の2学期制(セメスター制)という慣例を捨て、1年を4つに分けるクォーター制へと踏み切りました。

長澤理事長: 大学院生がリーダーである「親」となり、学部生である「子」とチームを組んでプロジェクトに臨むことで、実践的なリーダーシップを養います。コロナ禍でも、オンラインを駆使しながら地域での活動はやめませんでした。

長澤理事長:最初は観光客気分でも、ひと月以上もいると当事者意識が芽生えてくるんです。地域の人と生活を共にし、祭りに参加させてもらう中で、「なぜこの祭りをやっているんですか?」などといった本質的な問いが生まれてくる。そうやって地域に深く入り込むことで、学生たちは地域の人々と社会に直接向き合い、表面的ではない、本当の意味での価値創造を学んでいくのです。

長澤理事長:驚くことに、長期地域滞在型プロジェクトに参加した学生の数名が、継続的に、プロジェクトで滞在した地域に戻って就職しているんです。具体的には、熊本県の天草市や北海道の森町などです。天草市では、天草エアラインや地元のケーブルテレビ局、森町では、北海道NHKの職員や森町役場の職員になって町と関わり続けている卒業生もおり、「地域の人」として迎えられているのです。

長澤理事長:まさにそうです。重要なのは、彼らがボランティアではなく、地域おこし協力隊や地元企業などへの正規雇用といった形で、きちんと経済的に自立している点です。これだけ長期間滞在すれば、単なる「お客さん」ではなく、地域にとって不可欠な「人材」として認められる。そんな好循環が各地で起きています。

産学プロジェクト実践演習(学部)/産学プロジェクト実践研究(大学院)

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