
グロービス経営大学院 君島 朋子 研究科長インタビュー
「創造と変革の志士」を輩出するビジネススクールが成長を続ける理由
社会の変化が加速度的に進むなか、多くの大学がこれからの教育のあり方を問い直している。そんな中で、時流を鋭く捉え、社会人教育の分野で確かな存在感を築いてきたビジネススクールがある。多様なビジネスパーソンに選ばれ、 日本最大のビジネススクール* となった、グロービス経営大学院だ。数ある経営大学院の中で、社会人教育の分野においてこれほど支持され、成長してきたのはなぜか。
同大学院 経営研究科 研究科長を務める君島朋子氏は、その成長を支えるものとして、学長の堀が建学に至った「使命感」を挙げる。それを実装した独自のカリキュラムが、いかにして変化の時代を牽引する次世代のリーダーを育成しているのか。大学ブランディング支援や経営者のビジョン探求に携わるコトヴィアの荻原実紀さんをインタビュアーに迎えて、グロービス経営大学院の独自性と教育の未来を探った。
* 参考:文部科学省「令和7年度専門職大学院一覧」

揺るぎなき建学の使命——社会にダイナミズムを起こす「創造と変革の志士」を輩出する
--本日は、ビジネスパーソン向けのMBAプログラムにおいて、非常に強い存在感を放つグロービス経営大学院の成長の秘訣、特にその根幹にある使命感や「目に見えない価値」について、ぜひお聞かせいただきたいと考えております。多くの社会人から選ばれ続ける理由はどこにあるのでしょう。
君島研究科長:我々の存在意義は、非常に明確に言語化されています。それは「社会にダイナミズムを起こす創造と変革の志士を輩出する」ことです。グローバルな視野で見た場合、ビジネスの世界において、日本には真に新しい事業をつくり、組織のあり方を根本から変えられる人材が不足している。そうした大きな創造や変革を起こせるリーダーを育て、本気で実践できる状態にして社会に送り出すことこそが、本学の使命です。このことは学生にも常々伝えており、「あなたたちには『創造と変革の志士』になってもらうためにここに来てもらったんだ」と、繰り返し語りかけています。単なるスローガンではなく、教育の土台であり、開学以来変わらずに掲げている私たちの揺るぎない軸です。

――使命感が組織の価値とふるまいを方向づけ、存在意義を実践へ変えていく。この一貫性は、教育機関のブランド価値としても非常に大きいと感じます。
ミクロとマクロで磨く「志」の醸成サイクル──議論・内省・対話の三位一体
――特に、「志」という概念は印象的です。学生一人ひとりの志を、どのように引き出し、育成されているのでしょうか。
君島研究科長:「志」を育むための多層的な仕掛けを用意しています。
まずミクロな分野では、全ての授業が徹底した議論と積極的な発言を前提に設計されています。自分の考えを言葉にして、異なる立場の仲間と議論し合い、思考を磨いていく。学生たちには、入学から卒業まで、このアプローチを一貫して求めます。
一方、マクロな分野では、カリキュラム上の仕掛けとして、「ヒト・モノ・カネ」のような経営の定石である科目と共に、「志」という領域を必修科目として組み込んでいます。英語のMBAプログラムには留学生も多いのですが、彼らにも“志=Kokorozashi”という日本語のまま伝えています。「志」は本学の教育理念のひとつでもあり、もちろん意味は翻訳し、理解してもらっています。
この「志」教育では、様々なリーダーの生き方を学び、自身のキャリアの棚卸しや360度フィードバックなどを通じて、徹底的な内省を促します。そして、そこで考えた「自分は何を大事にしたいのか」「社会にどう貢献したいのか」という軸を、あらゆる角度から繰り返し言語化してもらいます。ビジネスの現場で、大きな壁に直面したとしても、揺るがない「志」があれば諦めることなくリーダーシップを発揮し続けられます。
そして最も重要なのが、ピア(仲間)との対話です。多様な経験をもつ仲間と「志」を語り合うことで、自身の想いがさらに研ぎ澄まされていきます。
これらに加え、学長との対話セッションや、各業界のトップリーダーの「志」に触れるセミナーなど、多様な機会を通じて、学生たちが自分の「志」を語ることが当たり前になる環境を意図的につくり出しています。この繰り返しによって、卒業時には誰に聞かれても「自分のやりたいことは何か」を熱く語れる状態になって、社会に出ていくのです。これらの様々な取り組みを、志の醸成サイクルと呼んでいます。

(次ページへ続く)


