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フェリス女学院大学 小檜山 ルイ学長インタビュー[前編]

フェリスでは「源氏物語が主専攻、バイオリンが副専攻」が可能

小檜山:もちろんあります。音楽はフェリスの伝統であり、強みでもあります。ただ、音楽学部で演奏等を学ぶという体制はここでいったん区切りとし、新たに自由学芸の一部としての音楽、つまり他の様々な学び、学問の中のひとつとして音楽を位置付けます。

一方で、演奏ができるというのは素晴らしいことです。だから、演奏技能を捨ててしまうのではなくて、グローバル教養学部の中にもパフォーミングアーツという科目を残し、声楽やバイオリン、チェロ、あるいはアンサンブル等を学ぶことができるようにします。これは、CLA(全学教養教育機構:Center for the Liberal Arts,21世紀型のリベラルアーツ教育を展開している)にある「共通科目」の中に置かれており、どの学科に所属していても、楽器や声楽を学びたい人はその科目を取ることができるのです。

小檜山:そうだといいんですけどね。学生の中には、音楽が好きだけれど、音楽大学へ行くとなると、技量が足りなくて諦めたという人もいる。あるいは、音楽を学びたいけれど、音楽を職業でやっていくのはあまりに狭き門で不安だという人もいるかと思います。実際、芸術家として経済的に自立していける人はごく少数で、そのような人の多くは早い段階で海外に行ってしまいます。

音楽大学に行くほどではないけれど、音楽が大好きだという人はたくさんいます。そういう人が、例えば源氏物語を専攻しながらバイオリンをやるだとか、そういったことができるようにしたいのです。

実は、私もフェリス女学院中学・高等学校にいた頃、オーケストラでバイオリンを弾いていました。その頃は、それなりに一生懸命やっていたのですが、大学に入って2年ぐらいで他のことが忙しくなって、結局やめてしまいました。

それ以降、楽器は持っているけれど触れていないという状況で、ちょっと残念だったな、続けていればよかったなと思ったりもします。しかし、若い頃に音楽をやっていると、年を取って時間ができたらまた習いなおすということもできると思います。

いろいろな意味で、音楽を学んだ経験というのは、単に趣味というのではなく、人生を豊かにする要素だと思います。自由学芸のひとつとして音楽を学び、その一方で、経済的に身を立てられそうな分野も学んでおく。「音楽・身体表現専攻」の中には、「音楽ビジネス」を設けています。演奏者にはならなくとも、音楽を学び、ホールの運営や企画ができ、マーケティングができるような人を輩出したいのです。裾野の広い音楽業界で使えるノウハウや能力を持った人を養成したいと思っています。

音楽の世界で経済的に自立できる道も目指せるし、自由学芸の一部としての音楽を他専攻の人でも学べる。「音楽がある人生」というビジョンですね。これはフェリスの特色になると思っているので、来年度から音楽副専攻も作ります。科目群を組み、その中から必要な単位数を取得すれば音楽副専攻の修了証書を出します。主専攻は別分野でも副専攻は「音楽」です。それを、社会に出る時にも、自己アピールとして使えるようにします。

なお、現在の副学長・武井涼子先生は音楽ビジネスの担当で、専門はマーケティングですが、オペラ歌手としても活動しています。マーケティング業界で活躍しながらも、彼女にとっては、舞台で歌うことにそれを超える魅力があるようです。経済的自立の術をひとつ持ちながら、音楽家としても活動するという人が実際にいます。

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