
大阪経済大学 山本俊一郎学長 インタビュー「創発が日常になるキャンパス」
6. 次なる地平へ:「超実践的」な学びの実現に向けて
多くの大学でPBLやインターンシップが一般化する中、大阪経済大学が見据えるのは、その一歩先にある「超実践的」な学びの姿だ。それは、大学と職場の境界線を限りなく曖昧にし、学生が企業や地域社会のリアルな業務に深く入り込みながら学ぶ、新しい教育モデルである。これからの時代に求められる実学の、新たな地平線について語ってもらった。
インタビュアー: これまでの取り組みも非常に実践的ですが、さらにその先に見据えているものはありますか?
学長: はい。今後は、現在のPBLをさらに進化させた「超実践的」な学びを実現したいと考えています。具体的には、企業が新人研修で行うようなOJT(On-the-Job Training)レベルの経験を、在学中に大学のカリキュラムとして取り込んでしまおうという構想です。
インタビュアー: 大学の「授業」として、実質的に仕事の経験を積むということですね。
学長: ええ。すでにその萌芽となる成功事例があります。本学の卒業生が経営する通関業者*との連携で、有給の長期インターンシップを実施しました。学生は報酬を得ながら現場で通関業務を学び、同時に資格取得のための講座も企業から提供してもらう。まさに大学と企業の双方にメリットがあるモデルで、実際にこのプログラムから資格を取得し、そのまま就職した学生も出ています。
*輸出入に関する通関手続きを代行する専門家のこと
インタビュアー: それはPBLを超えた、まさに業務そのものの学びと言えますね。
学長: そうです。今後は、こうしたモデルを様々な業界で展開していきたい。また、オンライン授業の単位上限が緩和されたことを活かし、例えば学生が1年間「地域おこし協力隊」のような活動に専念しながら、オンラインで大学の授業を履修し、4年間で卒業できるような、より柔軟な制度設計も構想しています。
インタビュアー: 学びの場をキャンパス内に限定せず、社会全体に広げていくというビジョンですね。
学長: はい。大学と社会の壁を取り払い、学生がよりリアルな課題に長期間向き合う機会を作ること。それが、これからの「人間的実学」が目指すべき姿だと考えています。
エピローグ:本の紹介
インタビュアー:最後に、毎回インタビューでお願いしているのですが、「本」の紹介をしていただきたいのですが。若い人に向けて、あるいは、教育関係者に向けて、いま、読んでほしい本はございますか?
学長:横石知二 著『そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生』(SBクリエイティブ、2007年)をお勧めします。すでにご存じの方も多いと思いますが、徳島県上勝町の「つまもの」ビジネスによる地域活性化の取り組みのお話です。
何度読んでも、逆転の発想から価値を再発見し、それを磨いていく大切さに気づかされますし、地方の活性化には「ないものねだりをやめてあるもの探しをする」考えが必要不可欠であることを理解することができます。わかりやすく平易な文章で綴られているので、高校生、大学生はもちろん、まちづくりに関わる方、経営者の方にもぜひ一読していただきたい本です。
(記事終わり)
大阪経済大学 学長 山本俊一郎 (やまもと しゅんいちろう)氏 プロフィール
1974年、香川県出身。1999年、埼玉大学大学院 教育学研究科 教科教育専攻 修了。2003年、東北大学大学院 理学研究科 地学専攻博士後期課程 修了、理学博士(東北大学)取得。
2005年、大阪経済大学経済学部の講師として着任、2008年、同大学准教授、2014年同大学教授(現在に至る)。2019年4月、44才の若さで大学学長に就任。現在、3期目に入り、学園の発展をリードしている。 単著『大都市産地の地域優位性』ナカニシヤ出版,2008年のほか、論文等多数。
インタビューと記事執筆:原田 広幸(KEI大学経営総研 主任研究員)


